生理生態学とは

自然において、生物は様々なふるまいをします。自然生態系で起こる現象は、生物のふるまいの積み重ねです。そして生物のふるまいは、個体の生理学的な現象の積み重ねでもあります。生理生態学は生物のふるまいを生理学的観点や生理学的手法を用いて調べることを通して生態学的な現象のメカニズムを理解しようとする学問です。

 生理学との違いは、その目的にあります。生理学が、植物の生理機能そのものを明らかにしようとするのに対し、生理生態学の目的は、生態学的現象を明らかにすることです。そのときに生理学的手法を用いることが特徴です。

 生態学の他の分野との違いは、生理機能へのこだわりです。対象とする現象がどのような生理機能の結果なのか、納得がいかなければタンパク質レベルまで掘り下げます。

 生物のふるまいには必ず生理学的な制約が伴います。最も理解しやすいのは環境ストレスが引き起こす乾燥・光阻害・低温障害といった生理学的傷害かもしれません。しかし生理学的な制約は非ストレス環境でも重要です。生物は生存・成長・繁殖のために様々な資源(光・水・栄養塩など)を必要とします。野外では全ての資源が充分ある環境はほとんどなく、資源の吸収速度によって成長が制限されます。また、吸収した資源をどのように利用するかも重要です。例えば、たくさん種子を作りたいなら、高い光合成速度をもつ葉をたくさん作れば良いでしょう。しかし、高い光合成速度を持つ葉を作るためには、光合成系のタンパク質を作るためにたくさんの窒素が必要となります。また、たくさんの葉を支えるためには、より多くの支持器官への投資が必要となります。このように、何か利益を得るときには何らかのコストが必要になります。単純には、コストあたりの利益を最大にできる個体が自然選択で生き残ることができたと考えられます。したがって、生物の戦略を理解する上で、生物のふるまいにおける利益とコストを把握することは不可欠であると言っても過言ではありません。生理生態学の魅力は、利益とコストの関係を物理化学的に明らかにできることです。