このグループで研究できること

 我々のグループでは、野外・実験・理論の三つのアプローチを併用しています。生態学的現象を直接扱う場合は野外で、重要な要因(例えば光環境や温度環境)を抽出して直接的な影響を観察する場合や環境をそろえることで種固有の違いを明らかにする場合は実験圃場や人工気象室で育成した植物を利用して研究します。いずれのケースも育成した植物のサンプルを得て実験室で解析する点は共通です。この他、計算機を利用した理論的研究も行っています。

○野外調査

 我々は固有のフィールドはもっておらず、もっぱら実験室や理論から生まれてきたアイディアに対し、それを実現するための最適なフィールドを探すということで調査地を設定してきました。以下これまで利用してきたフィールドを挙げます。

・八甲田山系:標高900mに東北大植物園八甲田山分園があり、ここをベースとして様々な研究を行っています。ブナ林の共存機構、高層湿原の資源獲得競争、標高間比較などの研究を行ってきました。下に挙げるCO2噴出地も八甲田にいくつかあります。

・北大苫小牧研究林:ここには林冠観測ゴンドラや高さ20mのジャングルジムなど森林研究のための最新設備が整っていることと、林長の日浦勉教授の決断の速さのおかげで大規模な野外操作実験を行うことができます。我々はギャップ作成後の光合成順化の観察のために人工ギャップを作成したり、ミズナラ林冠葉の季節順化の研究を行ったりしました。現在はミズナラの温暖化実験などを行っています。

・天然CO2噴出地:植物の高CO2応答を野外で研究するために利用しています。現在のところ八甲田山系に3つ、山形県鶴岡市周辺に2つ、富山県林道に2つ利用可能なCO2噴出地を見つけています。このうち4つのCO2噴出地で調査を行いました。

・東北大植物園:中間温帯林がよく保存されています。常緑樹の光合成特性の季節変化などを調べました。

・釜房ダム湖畔:オオオナモミの純群落が形成されます。個体間光獲得競争・窒素獲得競争の解析を行いました。

・東北大川渡農場:大規模なススキ草地が維持されており、他種共存機構の研究を行いました。

・東大千葉演習林:常緑広葉樹の光合成特性の種間比較を行いました。

・金華山島シバ草地:金華山ではシカが保護されており、かなり高密度で生育しています。鹿山と呼ばれる地区ではシカの強い採食圧のため森林が発達せずシバ草地が維持されています。森林育成のため防鹿柵が作られ、柵内部では遷移が進行しています。柵内外の群落で光獲得競争の解析を行いました。

・キナバル山(マレーシア):赤道付近の標高約4100mの山です。光合成特性の標高間比較を行いました。

・イネFACE(Free air CO2 enrichment):ごく普通の水田に高CO2付加装置をつけ、水田環境への高CO2効果を調べる研究で、農業環境研究所と東北農業センターが行っています。我々は二度参加させていただき、群落構造の解析と光合成特性の季節変化を解析しました。

○実験圃場

 東北大学生命科学研究科の実験圃場で研究を行っています。北向きの斜面のため日当たりがあまりよくないことがちょっと不満ですが、ここでは実験群落の解析や個葉の光合成特性の季節変化など様々な研究を行ってきました。目玉としてCO2付加装置があります。

・オープントップチャンバー(OTC):野外に近い環境で高CO2効果を調べることができます。1997年の設置以来様々な研究を行ってきました。近年はもっぱらCO2噴出地からとってきた植物の高CO2応答を調べるために利用しています。

○人工気象室

 大型の人工気象室が2台、小型のものが5台ほどあります(故障中のものもあります・・・)。制御環境下で植物を育てたい場合、同じ環境で育成した植物を何度も得たい場合に利用します。

○測定

 生理生態学的研究では様々なパラメータを測定します。遺伝子と同位体以外は全て自前で測定できるようになりたいと考えています(遺伝子・同位体は他の研究室にお願いしています)。現在当研究室で測定可能なパラメータは以下の通りです。

・光強度(光量子センサ・光ダイオード・全天写真・感光フィルム・ラインセンサ・キャノピーアナライザ)
・光波長組成
・光合成速度(光強度・CO2濃度・O2濃度・温度・湿度を変えて測定可能。クロロフィル蛍光との同時測定も可能)
・呼吸速度(葉だけでなく、根や茎など器官レベルも可能)
・クロロフィル蛍光(光化学系IIの情報のみ)
・酸素発生速度(気相・液相)
・炭素・窒素濃度
・タンパク質含量(ローリー法・ミクロビゥレット法・ニンヒドリン法・ルビスコ量)
・クロロフィル含量
・糖含量(還元糖・グルコース・デンプン)
・酵素活性各種(ルビスコ・FBPase)
・総フェノール・タンニン・リグニン
・カロリー(構成コスト)
・カロテノイド含量(ちゃんと確立していませんが)

○研究テーマ

 現在扱っている大きなテーマは以下の通りです。これまで行ってきた研究はこちら、今年度行っている研究はこちらをご覧ください。

・植物の地球環境変化応答の予測・・・CO2上昇や温暖化に植物個体や植物群落がどう応答するかを予測することが目的です。

・CO2噴出地の植物の生態・・・地球環境変化と関連していますが、高CO2環境に長期間さらされた生態系ならではの研究をしています。

・光合成系の温度応答・・・温度-光合成曲線の環境依存的変化や種間差、そしてその生理学的メカニズムがテーマです。

・光合成能力の種間差・・・種によって光合成速度が高いものと低いものがいます。その生理的メカニズムと生態学的意義(なぜ光合成速度が低いものが勝ち残れるのか)を調べています。

・植物の資源獲得競争・・・植物群集における共存機構や競争機構を生理生態的な視点から明らかにしようとしています。