日本生態学会第51回大会;発表要旨


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高CO 2濃度で生育したイネの光合成速度の温度依存性の季節変化

○アラマス1, 彦坂 幸毅1, 広瀬 忠樹1, 長谷川 利拡2, 岡田 益己3, 小林 和彦4
(1 Graduate School ofLife sciences, Tohoku University, Sendai, Japan,2 National Institutefor Agro-Environmental Sciences, Tsukuba, Japan,3 NationalAgricultural Research Center for Tohoku Region, Morioka, Japan,4Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University ofTokyo, Tokyo, Japan)

石燃料の大量消費など人間活動により、今世紀末までに大気CO 2濃度は現在の二倍700ppmに達し、年平均気温は2-5。C増加すると予測されている(IPCC 2001)。CO 2は光合成の基質なので、CO 2上昇は直接、植物の物質生産(一次生産となる光合成)機能に大きな影響を与える。高CO 2による光合成速度の応答についてよく研究されてきたが、長期的な高CO 2と他の環境要因(例えば、温度)の組み合わせを調べた研究は相対的に少ない。温度は植物の光合成応答と密接的に関連する。温度ム光合成関係は種によって様々であり、同一種でも生育温度によって変化する。温度ム光合成関係が変化するメカニズムがまだ不明な点が多い。野外の温度環境は季節と共に大きく変動するため、植物の高CO 2応答は季節変化に大きく影響されると考えられる。

我々は、岩手県雫石で行われているRice FACE(Free Air CO 2 Enrichment、野外の群落に直接、高CO 2濃度のガスを吹き付ける自由大気CO 2上昇実験)においてイネの光合成特性の変化を調べた。

光合成能力はRuBP carboxylation最大速度(V cmax)とRuBP regeneration最大速度(Jmax)で定義される。これらのパラメータはA-Ci曲線から計算することができる。我々はイネの生育期間を通し(6、7、8、9月)、FACEとAmbient CO 2条件におけるイネの葉光合成の温度依存性を調べた。イネの光合成の温度依存性及び高CO 2の影響について議論する。


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オオヤマオダマキにおける、花序内の花間で雄期・雌期の長さが性投資量におよぼす影響

○板垣智之・酒井聡樹(東北大・院・生命科学)

開花期間の長さは雌雄の繁殖成功に影響する。すなわち、開花期間が長いほど多くの花粉を送受粉できるだろう。開花中の気温の違いなどのため花序内の花間で開花期間が異なる場合、花間で繁殖成功が異なるのではないだろうか?もしそうなら、花間で性投資量も異なるのではないだろうか?本研究では、2002, 2003年にオオヤマオダマキを材料に、花ごとの開花期間(雄期・雌期の長さ)、性投資量(花粉数・胚珠数)、および繁殖成功(放出花粉数・種子数)を、花序内の開花の早い花と遅い花とで比較した。

その結果、両年とも開花の早い花ほど雄期が長く、花粉数も多かった。また、雄期が長い花ほど多くの花粉を放出していた。一方、雌機能は両年で異なるパターンだった。2002年は開花の早い花ほど雌期が長く、胚珠数も多かった。しかし、2003年は花間で雌期間・胚珠数に差はなかった。また両年とも、雌期の長さとその花の生産種子数とに有意な関係は見られなかった。

これらの結果から、雄器官への投資量の花間の違いは、雄期の長さが雄繁殖成功に影響するためと考えられる。これに対して、雌器官への投資量には雌期の長さは影響しないようだ。一般に、雄繁殖成功に比べて雌繁殖成功は、ポリネーターの訪花数に対して早く頭打ちすることが知られている。そのため、雌期間は短くても十分な訪花量が得られると考えられる。このように、花間の開花期間の違いは、雌器官よりも雄器官への投資量に影響することが示唆される。


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雪田植物チングルマにおいて、開花時期の違いが資源分配の個体サイズ依存性に与える影響

○辻沢央・酒井聡樹(東北大・院・生命科学)

消雪時期の違いに依存した、繁殖への資源分配戦略の個体サイズ依存性の違いを明らかにするために、雪田に生育するチングルマ(Sieversia pentapetala)を用いて、消雪時期が異なるサイトごとに、繁殖器官への資源分配量と個体サイズ(個体が持つ資源量)との相関関係を調べた。花への資源分配量のサイズ依存性は、消雪時期が早いサイトではみられなかったが、遅いサイトではみられた。この傾向は調査年度によらず一定であった。花の各器官への資源分配量を個別にみると、雄蕊群への資源分配量のサイズ依存性は、消雪時期が早いサイトではみられなかったが、遅いサイトではみられた。この傾向は調査年度によらず一定であった。雄蕊群への資源分配戦略は、消雪時期の違いによって生じるポリネーター環境の影響を受けていると考えられる。その一方で,雌蕊群の資源分配量のサイズ依存性には、年変動がみられた。雌蕊群への資源投資戦略は、年によって大きく変動するなんらかの環境要因の影響を受けていることを示している。花弁への資源分配量は、すべてのサイトにおいて個体サイズによらず一定であった。繁殖成功に関しては、種子の大きさはすべてのサイトで、個体サイズによらず一定であった。種子の数のサイズ依存性は、年度によって異なるパターンを示した。以上の結果より、消雪時期の違いによって生じる繁殖成功の違いは、繁殖への資源分配戦略の個体サイズ依存性のパターンに影響を与えていないことが示唆される。


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ヒメシャガにおける花被片間の機能的分化

○森長真一・酒井聡樹(東北大学・院・生命科学)

花弁や花被片などの誘引器官の多様性は、それぞれの植物が効率的な送受粉のために進化させてきた結果である。このような花弁(花被片)の多様性と進化を理解するためには、それぞれの花弁(花被片)に対する選択圧を検出する必要があると考えられる。

本研究では、大きさと形の異なる花被片(外花被片と内花被片)をもつヒメシャガ(アヤメ科)を材料に、花被片間の機能分化と各花被片に対する選択圧の違いを明らかにすることを目的とした。そこで2003年仙台市青葉山のヒメシャガ集団において、個体ごとに各花被片の長さを人為的に処理して、送粉者の訪花頻度と送受粉数/訪花、そして最終的な雌雄繁殖成功の指標として送粉数/花(雄繁殖成功)と種子数/花(雌繁殖成功)を調査した。

その結果、外花被片と内花被片間には雌雄機能への貢献度と選択圧に違いがあった。外花被片は雌雄機能に貢献しており、現在の長さが適応的であった。一方、内花被片は雄機能のみに貢献しており、ある程度短くしても送粉数が減少しないため、現在よりも短い長さが適応的であった。また内花被片が適応的な長さに進化しなかったのは、外花被片と内花被片間の遺伝相関などの制約によるものかもしれない。花弁(花被片)にみられる多様性は、各花弁(花被片)に対する選択圧の違いとその間の制約により進化してきたと考えられる。


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フキにおける三つの花型の適応的意義:訪花昆虫の誘因に貢献しているか?

○鈴木由佳[1]・星崎和彦[2]・小林一三[2]・酒井聡樹[1]([1]東北大院・生命科学 [2]秋田県立大・森林科学)


フキは雌雄異株植物であるとされている。メス花序は、多数のメス小花(雌しべ稔性有り・花粉なし)と少数の両性小花(雌しべ不稔・花粉無し)を持つとされ、オス花序は、両性小花(雌しべ不稔・花粉有り)のみを持つとされている。最近これに加えて、両性小花(雌しべ不稔・花粉有り)とメス小花(雌しべ稔性有り・花粉なし)を持つ花序(「オスメス花序」と呼ぶ)も低頻度で出現することがわかってきた。フキにおいて、この3つの花型はなぜ維持されてきたのだろうか。

そこで本研究では、メス花序・オス花序・オスメス花序の3つの花型の花序・頭花・小花それぞれの形態を比較した。また、それぞれの花型への昆虫の花序訪問回数を調べた。その際、メス花序への訪花昆虫の誘引に役立っているとされている両性小花を除去した時、昆虫の花序訪問回数に影響するのかどうかも調べた。

その結果、オスメス花序とオス花序の形態がきわめて近いことがわかった。昆虫の訪花が十分に見られた時の花序訪問回数は、オスメス花序とオス花序はほぼ同じで、どちらもメス花序より有意に高かった。両性小花を除去したメス花序と無処理のメス花序の花序訪問回数は変わらなかった。

これらのことからオスメス花序は、形態においても訪花昆虫の誘引においても、オス花序により近いといえるだろう。メス花序は、オスメス花序やオス花序と比べて訪花昆虫を有効に誘引していないのではないかと考えられる。今後は、3つの花型の雄繁殖成功や雌繁殖成功を調べ、それぞれの花型が共存する条件を探る必要があるだろう。

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