日本生態学会第52回大会;発表要旨


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ウバユリにおける種子生産戦略:獲得窒素量/獲得炭素量比に依存した、呼吸による資源消失量と生産種子数の変化

○酒井聡樹1・酒井暁子2・藤岡宏太3
(1東北大学・院・生命科学,2横浜国立大・環境情報,3東北大・理・生物)


親個体が種子生産に投資できる窒素量と炭素量の比は、親個体によって異なりうる。では、自身の窒素/炭素比に依存して、どのように種子生産をすることが有利なのであろうか?

炭素は呼吸により失われるのに対し、窒素は保持することが出来る。そのため、窒素に比して炭素の少ない個体では、炭素を確保するため、呼吸による炭素の消失を抑えることが有利となるのではないだろうか?この観点から、窒素/炭素比に依存した種子生産戦略を解析した。

調査は、仙台市青葉山に自生するウバユリを対象に行った。77個体について、茎の窒素量と種子の窒素量・乾燥重量(炭素量の指標;以下同様)を測定した。種子生産中に消失した乾燥重量も推定した。

茎の大きさ(炭素量の指標)の影響を取り除いて解析したところ、以下のことがわかった。茎の窒素量が多い個体(窒素に比して炭素の少ない個体)ほど、1) 種子生産中に呼吸により失われる乾燥重量は少なく、2) 生産種子の総乾燥重量は多く、3) 生産種子の総窒素量も多かった。それだけ、呼吸による乾燥重量の消失を抑え、炭素資源を有効に利用したということである。次に、茎の窒素量が、生産種子数・種子あたり乾燥重量・種子あたり窒素量のどれに影響しているのかを解析した。その結果、茎の窒素量が多い個体ほど生産種子数が多いものの、種子あたり乾燥重量と種子あたり窒素量は変化しないことがわかった。さらに、生産種子数が多い個体ほど、呼吸による乾燥重量の消失が少なかった。

これらのことは、茎の窒素量が多い個体は、種子数を増やすことで呼吸による資源消失を抑えていることを示唆する。このように植物は、種子数を調節することで、自身の窒素/炭素比に依存した種子生産を行っていると結論した。


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冷温帯林におけるミズナラ林冠葉の温度−光合成特性の季節変化

彦坂幸毅(東北大・院・生命)・鍋嶋絵里・日浦勉(北大・苫小牧研究林)


光合成速度の温度依存性は同じC3植物でも種や生育温度によって異なる。光合成の生化学モデルに基づけば、光合成速度の温度依存性は(1)葉内二酸化炭素濃度、(2)RuBP(リブロース二リン酸)カルボキシレーション最大速度(Vcmax)の温度依存性、(3)RuBP再生最大速度(Jmax)の温度依存性、(4)カルボキシレーションと再生のバランス、の4つのパラメータに帰することができる。本研究ではミズナラの林冠葉においてこれらの要因がどのように季節変化をするのかを調べた。北大苫小牧研究林の落葉広葉樹林において、林冠クレーンを用い葉群最上部の葉の光合成速度を様々な温度・二酸化炭素濃度で測定した。測定は2001年・2002年にそれぞれ3回行った。20度で測定した光合成速度、気孔コンダクタンス、Vcmaxは春と秋に低く、夏に高かった。20度で測定したJmaxは春から夏にかけて上昇し、秋の低下は見られなかった。Vcmaxの温度依存性は春と秋に低く、夏に高い傾向を示し、生育温度と正の相関が見られた。一方その他のパラメータには明確な季節応答・生育温度応答は見られなかった。夏季にVcmaxの温度依存性が増加することにより光合成速度の最適温度が若干上昇していることが示唆された。


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天然CO2噴出地においてCO2濃度、光、土壌窒素がオオイタドリの葉の光合成特性に及ぼす影響

○長田典之・小野田雄介・彦坂幸毅(東北大・生命科学)


植物の高CO2濃度応答の実験はこれまでに数多く行われてきている。この結果、高CO2の影響は光や土壌条件によって異なることがわかってきた。しかし、これらの実験期間はせいぜい数年から数十年にすぎない。実際に長期間にわたって高CO2濃度にさらされた植物では選択圧がかかり、遺伝的に変化する可能性がある。このため、将来の高CO2濃度に適応した植物の応答は、現生の植物を対象とした短期間の実験の結果とは異なるかもしれない。以上の問題に答えるために、当研究では、実際に長期間にわたり高CO2濃度にさらされてきたと考えられる、八甲田山系田代平の天然CO2噴出地およびその周辺に優占するオオイタドリ群落22カ所を対象として、光、土壌条件および、大気CO2濃度を正確に査定することにより、これらの環境要因が総合的にオオイタドリの葉の光合成特性に与える影響を調べた。

この結果、オオイタドリの葉は、光条件が良いほどLMA(葉面積あたりの質量), Narea(葉面積あたりの窒素量),Vcmax(最大反応速度), Jmax(電子伝達速度)は大きくなっていたものの、高CO2の影響はLMAのみでしか見られなかった。また、これらの性質には土壌条件による差はみられなかった。光条件が良いほどChl/N(窒素あたりのクロロフィル量)は減少し、Vcmax/chlとJmax/chlは増加していた。また、Vcmax/chlとJmax/chlには光とCO2の交互作用が見られ、光条件が良いほど高CO2で値が大きくなっていた。さらに、Jmax/Vcmaxは高CO2で大きくなっていた。以上の結果に基づき、高CO2濃度が光、土壌条件とともにオオイタドリの葉の光合成特性に及ぼす影響を議論する。


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高CO2下における一年草の繁殖成長と呼吸消費

○衣笠利彦・彦坂幸毅・広瀬忠樹(東北大学・院・生命科学)


高CO2によって一般に光合成速度が促進されるが、その促進は必ずしも繁殖収量(生育終了時の繁殖器官重)の促進に結びつかない。これは繁殖収量が、光合成産物の獲得だけでなく、その繁殖分配や呼吸消費の変化にも影響されるためだと考えられる。そこで高CO2にともなう繁殖収量の変化を、光合成産物の獲得、繁殖分配、呼吸消費の高CO2応答の結果として解析した。

一年生草本オオオナモミ(Xanthium canadense)を大気CO2濃度(約360ppm)と高CO2濃度(約700ppm)下で生育させ、生育期間中に定期的に刈り取りを行った。刈り取りと同時に各器官の呼吸速度の測定を行い、乾重成長量と呼吸消費量を合算して光合成量を算出した。

高CO2による個体光合成量の増加は、栄養成長期間中にみられたが繁殖成長期間中にはみられなかった。光合成産物の繁殖分配割合にも高CO2の影響はなかったが、繁殖収量は増加した。これは繁殖器官における光合成産物の呼吸消費割合が、高CO2によって低下したためであった。この呼吸消費割合の低下は維持呼吸量の低下によるものであり、それは高CO2生育個体の繁殖器官の初期成長が低いことと季節にともなう気温低下に起因すると考えられた。これらの結果は、繁殖収量の高CO2応答において、呼吸消費と気温の変化が重要な役割を持つことを示している。


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葉の光合成光順化と解剖学的性質との関係

○小口理一(東北大学・院・生命科学)


植物が受ける光環境は時間的、空間的に多様である。ギャップ形成などで突然の光環境の改善が起こると、多くの種では既に展開が終了した葉の光合成能力が上昇する。これは成長速度の上昇につながり、その後の光獲得競争に有利であると考えられる。しかし、この順化能力は種によって異なる。なぜ種によっては光順化を行わないのか?本研究では葉の解剖学的性質が成熟葉の光順化能力を制限すると考えた。葉緑体は細胞間隙からCO2を受け取るために葉肉細胞表面付近に存在する必要があるが、ほとんどの種において成熟葉は厚さの可塑性を失い、葉肉細胞表面の面積を増やすことができないからである。環境制御室において1種の草本と3種の木本について弱光から強光への成熟葉の生理的、解剖学的応答を調べた。また、自然環境での順化メカニズム、順化によるベネフィットを調べるため、冷温帯樹林にギャップを形成し、8種の木本実生の応答を観察した。

その結果、光合成能力の増加が見られた全てのケースで葉緑体が細胞間隙に接する面積(Sc)が増加し、Scの増加が光合成能力の増大に不可欠であることが示唆された。Scを増加させるメカニズムは種間で異なり、陰葉の細胞表面付近に葉緑体が存在しない隙間があり、そこを埋めるように葉緑体が大きくなる種、展葉終了後でも葉の厚さを増やし、葉肉細胞表面積を増やす種が観察された。一方、陰葉の細胞表面にほとんど隙間が無く、葉の厚さを変えることもできずに光合成能力が変化しなかった種も観察された。ギャップ環境での光合成速度を計算したモデルは、光順化による光合成能力の上昇は炭素獲得量を増やすことを示したが、順化に必要なコストやリスクまたギャップ形成の確率といった不安定要素があるために、順化能力を持たない種が存在すると考えられた。


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展葉から枯死まで〜オオバクロモジの葉の特性の季節変化〜

○安村有子、彦坂幸毅、広瀬忠樹(東北大学・院・生命科学)


光合成能力は葉の一生を通して大きく変化する。落葉樹オオバクロモジを用いて、光合成能力の季節変化が、葉の特性、特に葉内の窒素(N)利用の変化とどう関連しているかについて調べた。調査は2002年に青森県八甲田山のブナ林で行った。明るい林縁に生育する個体の葉(陽葉)と暗い林床に生育する個体の葉(陰葉)を用いて、展葉中の6月から枯死がみられた10月まで、1ヶ月ごとに光飽和光合成速度(Pmax)、葉面積あたりの葉重(LMA)、葉のN、ルビスコ、クロロフィル(Chl)、タンパク質含量を測定した。タンパク質は、界面活性剤可溶性画分(代謝活性に関与するタンパク質)と不溶性画分(細胞壁タンパク質)に分けて定量した。葉の一生を通して、Pmax、LMA、N、ルビスコ、可溶性タンパク質、不溶性タンパク質含量は陰葉よりも陽葉の方が高かった。Chl含量は陰葉の方が高かった。これらの特性は展葉期にすでに高いか増加し、成熟期にピークを迎え、老化期に減少する傾向があった。展葉完了後の葉では、N含量とChl、ルビスコ、可溶性タンパク質含量の間に、また、PmaxとN、Chl、ルビスコ、可溶性タンパク質含量の間に正の相関が見られた。結果より、展葉完了後には光合成に関係する各特性は協調して変化し、それに伴って光合成能力も変化していることが示唆された。

老化期に、Nの多くは回収された。生葉では、Nの大部分はタンパク質に存在していて、総タンパク質の90%以上は可溶性画分に含まれていた。老化期には、可溶性タンパク質の97%が、不溶性タンパク質の30-40%が分解されていた。細胞壁タンパク質は比較的回収されにくいようである。枯葉に含まれるNはタンパク質だけは説明できず、多くの窒素が他の形で残存していると考えられた。


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マルハナバチの株訪問頻度に与えるディスプレイサイズの効果:「見た目」か「中身」か?人工花を用いた実験

○牧野崇司・酒井聡樹(東北大学・院・生命科学)


一般にマルハナバチは、ディスプレイサイズの大きい(同時開花数の多い)植物個体により多く訪れることが知られている。しかし、マルハナバチが、ディスプレイサイズの大きい植物の「見た目(花数の多さ)」に誘引されているのか、「中身(報酬量の多さ)」に誘引されているのかはわかっていない。例えば、花数が多く見た目がよくても、報酬が伴わなければ、ハチはその植物を避けるかもしれない。逆に、見た目さえよければ無条件に何度も訪れるかもしれない。本研究では、人工花を用いた実験で「見た目」と「中身」の効果を明らかにする。

実験は、3 × 5 mの室内に、垂直花序を模した人工花を50cm間隔の格子状に配置し、クロマルハナバチを1個体ずつ放して行った。人工花は、自動的に液体がしみ出す仕組みとなっており*、花数と報酬の有無(ショ糖液 or 水) を自由に操作できる。実験に用いた花序タイプ[花の数 (報酬を出す花の数) ]の組み合わせは以下の二つである。a)[8 (8), 8 (0), 2 (2), 2 (0)] 各8株。b)[8(2), 2 (2)] 各16株。各花序タイプへのハチ個体の訪問を、1日約8時間ずつ記録した。

それぞれの花序タイプへの訪問頻度は採餌の初期と後期で異なり、以下の順となった。a)初期:8 (8), 8 (0) > 2 (2), 2 (0),後期:8 (8) > 2 (2) > 8 (0), 2 (0)。b)初期:8 (2) > 2(2),後期:8 (2)≧ 2(2)(差が縮まる)。以上の結果は、経験の少ないハチには「見た目」が重要だが、経験を積み、位置と報酬の関係を学習したハチにとっては「中身」が重要であることを示している。

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Seasonal change in temperature dependence ofphotosynthetic rate under free air CO2 enrichment in rice (Oryzasativa L.)

○Almaz Borjigidai1, Kouki Hikosaka1, Tadaki Hirose1, ToshihiroHasegawa2, Masumi Okada3, Kazuhiko Kobayashi 4(1 Graduate School ofLife sciences, Tohoku University, Sendai, Japan,2 National Institutefor Agro-Environmental Sciences, Tsukuba, Japan,3 NationalAgricultural Research Center for Tohoku Region, Morioka, Japan,4Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University ofTokyo, Tokyo, Japan)


We studied effects of growth CO2 and seasonal environment on temperature dependence of photosynthetic parameters. In 2003 and 2004, rice (Oryzasativa L.) stands were established at free air CO2 enrichment (FACE, 570mmol mol-1) in the field. Measurements were made for top leaves monthly. We focused on photosynthetic parameters, stomatal conductance, intercellular CO2 concentration (Ci), maximum rate of Rubisco activity (Vcmax), maximum rate of electron transport (Jmax), activation energy of Vcmax (Eav) and activation energy of Jmax (EaJ), which potentially affect temperature dependence of photosynthetic rates. Ci (determined at 25oC) increased seasonally. Eav and EaJ did not change during growing season. The ratio of Jmax: Vcmax increased seasonally, and was strongly correlated to growth temperature. Using the biochemical model, we reconstructed temperature dependence of photosynthetic rates. The optimal temperature of photosynthesis at growth CO2 was higher at FACE than at ambient conditions. At FACE the limiting step of photosynthesis changed during growth season, partly due to an increase in the Jmax: Vcmax ratio, while photosynthesis was always limited by Rubisco at ambient CO2. This resulted in different seasonal responses in the photosynthesis-temperature curve between FACE and ambient CO2.


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異なる緯度から得たオオバコにおける温度と光合成の関係

○石川数正・彦坂幸毅・広瀬忠樹(東北大学・院・生命科学)


植物の分布は、温度によって大きく影響される。光合成の温度依存性は種によって異なることが知られており、種の温度適応を決定する一つの要因であると考えられる。本研究では、光合成の温度依存性を決定する生化学的要因が、遺伝型間でどの様に異なるかを調べた。

材料には、亜寒帯から亜熱帯まで分布し、遺伝的変異が大きいことが知られているオオバコを用いた。北海道・仙台・静岡・沖縄に自生している個体を採取し、15℃または30℃で生育させた。そして、異なる温度・CO2濃度で光合成速度を測定し、光合成の温度依存性を決定する以下の4つのパラメーターを比較した。(1)ルビスコ活性の温度依存性、(2)RuBP再生反応の温度依存性、(3)葉内CO2濃度、(4)RuBP再生反応/ルビスコ触媒反応(両反応に投資するタンパク質の分配率)。

(1)、(2)、(3)は15℃、30℃の両生育温度において地域差はなかった。(4)は、15℃生育において北海道>仙台>静岡という傾向が見られた。光合成速度は二つの律速要因であるルビスコ触媒反応とRuBP再生反応のどちらか一方によって決定される。温度−光合成曲線において、ルビスコ触媒反応とRuBP再生反応のうち、どちらが律速しているかを解析した。その結果、北海道由来のオオバコの光合成速度は、全ての温度においてルビスコによって律速されていた。一方、静岡由来のオオバコの光合成速度は、10℃から15℃付近までRuBP再生反応によって、15℃以上の温度ではルビスコによって律速されていた。以上から、光合成系タンパク質のバランスが変化することが、異なる温度環境への適応に関係していると示唆された。


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高CO2が様々な一年草の繁殖に与える影響

○宮城佳明・彦坂幸毅・広瀬忠樹(東北大学・院・生命科学)


高CO2条件下では、光合成速度が促進されるため多くの植物で繁殖収量が増加する。しかし、その促進程度には種間差があることが先行研究により指摘されている。オオオナモミでは、高CO2条件下では栄養器官の成長は促進されるが、種子生産は促進されない。これは、種子生産が窒素によって律速されているからだと考えられた(Kinugasa et al.2003 Oecologia 137:1-9)。そこで、我々は窒素の獲得、利用の違いが繁殖収量の高CO2応答に種間差をもたらすと考え、11種類の一年生草本を高CO2条件(700ppm)と大気CO2条件(370ppm)にしたオープントップチャンバー内で育て、各々の種から繁殖収量を得た。繁殖収量を、繁殖期間の長さ、繁殖期間中の成長速度、および繁殖器官への資源転流率の積として表し、繁殖器官の窒素量を、繁殖期間の長さ、繁殖期間中の窒素獲得速度、および繁殖器官への窒素転流率の積として解析した。高CO2処理により有意に繁殖収量が増加したものが7種、変化しなかったものが4種であった。ほとんどの種で、収量の増加は繁殖期間中の成長速度の上昇で説明された。また、その中の多くの種で、繁殖期間中の窒素獲得速度が上昇しており、高CO2条件による獲得窒素の増加量と繁殖収量の増加量の間には正の相関があった。特にマメ科植物の窒素獲得量の高CO2応答は大きく、窒素固定による影響が示唆された。これらのことから、繁殖期間中に獲得、利用できた窒素量が高CO2条件下で高い植物ほど繁殖収量の増加が大きいと結論された。


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オオカメノキの装飾花は繁殖成功に貢献しているのか?

○内野祐佳1・酒井聡樹2(1東北大・理・生物, 2東北大・院・生命科学)


装飾花とは、花弁や萼が大きく発達する一方で、性的機能(雄しべや雌しべ)が退化した花のことである。一般に装飾花は、花序の外周部分に存在し、花序全体を視覚的に目立たせることで訪花昆虫の誘引に貢献していると言われている。しかし、装飾花が繁殖成功に本当に貢献しているのか調べた研究はない。

本研究では、オオカメノキを用いて、装飾花がメス繁殖成功に与える影響と装飾花の誘引効果について調べた。調査は、青森県八甲田山大岳と宮城県泉ヶ岳の2ヶ所で行った。メスの繁殖成功の指標として花序内の結実数を用い、それぞれの調査地で花序内の装飾花数、真花(性的機能を持ち花弁が小さい花)数と結実数を調査した。また、装飾花の誘引効果を調べるために、装飾花のある花序と除去した花序を個体内に人工的に作り、それぞれの花序への訪花頻度を比較した。

その結果、それぞれの調査地において、花序あたりの装飾花数が増えるほど真花数も増えた。しかし、結実数は装飾花数が増えても変化しなかった。これは、装飾花がメス繁殖成功に貢献していないことを示唆する。また、訪花頻度には、花序の装飾花の有無によって有意な差は見られなかった。

以上のことから、装飾花はメスの繁殖成功に貢献せず、また誘引効果についても花序単位では効果がないと考えられる。ではなぜ、装飾花は存在するのか? 今回の研究では、メス繁殖成功について主に調査した。今後は、オスの繁殖成功(花粉親としての成功)についてくわしく調査することで、装飾花の存在の適応的意義について明らかにしていきたい。


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