第11回東北生態談話会;発表要旨


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一年生草本オオオナモミの葉群における個葉の生涯の炭素収支

及川真平(東北大・院・生命科学)

葉寿命はひとつの種のなかでも環境条件によって大きく変わる。葉は炭素を稼ぐ器官であるから、葉寿命は、植物への葉の貢献(i.e. 生涯に稼ぐ炭素の量)が最大になるように決定されるという仮説が提案されている。一般に葉の光合成能力は展開終了時に高く、時間と共に低下する。植物への葉の貢献は、夜間の呼吸による炭素消費量が日中の光合成による炭素獲得量を上回るまで増加する。上の仮説は、葉は日炭素獲得が0になったときに枯れることを意味する。葉の炭素獲得量の低下は、主に受光量の低下によることが示されている。しかし、窒素(N)の供給量が少ない場合、受光量が多くても葉N含量は低下することがある。これは、新葉生産のN要求を満たすために古葉からのN回収が促進されることによる。この場合、正の炭素獲得が可能でも葉は枯れるかもしれず、上の仮説に合致しない。

本研究の目的は、以下の疑問に答えることである。(1)葉は日炭素獲得量が0になると枯れるのか?(2)炭素獲得量の低下を引き起こす要因として、光とNのどちらが重要なのか? 単純なモデル系として2つの栄養条件(富栄養; HN, 貧栄養; LN)で生育させた草本群落を用いた。個葉の炭素獲得量は、群落光合成モデルを用いて群落内の光環境と葉N含量から推定した。

葉の受光量は、群落の葉面積増加に伴い低下した。枯死直前の葉の受光量はHNよりもLNで高かった。葉N含量(Narea)は時間と共に低下した。受光量とNareaの低下により、日炭素獲得量は低下した。枯死直前の日炭素獲得量はHNでは0に近く、LNでは正の値を示していた。感度分析により、日炭素獲得量の低下を引き起こした主な要因は、HNでは受光量の低下、LNではNareaの低下であることが分かった。これらの結果は、葉寿命を決定するメカニズムが栄養条件によって異なることを示唆する。


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