2002年度講座セミナー要旨

(2003-04-25更新)

植物生態研究紹介 > 2002年度 講座セミナー要旨



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○上層木伐採により生じた強光環境下におけるヒバ前生稚樹の成長形態 −樹形発達と葉の形態・窒素含有量−

池添 綾香


ヒバ(ヒノキアスナロ)は耐陰性の高さなどから、複層林施業や育成天然林施業に適した樹種として期待されているが、長期間被陰下おかれた前生稚樹が上層木伐採による強光環境に対しどのように適応していくのかという基本的な点については未解明な部分が多い。

本研究ではミズナラ−ヒバ天然生林において、上層木伐採から8年経過したギャップ下(OPEN区)におけるヒバ前生稚樹の樹幹、一次枝、葉の形態、葉の窒素含有量について調べ、閉鎖林冠下(SHADE区)の個体と比較することにより、強光環境に対するヒバ稚樹の成長形態・光合成能力の差異を明らかにすることを目的とした。

両区において、樹高・樹幹長の平均は、SHADE区に対しどちらもOPEN区が大きかったが、OPEN区では樹幹長が長いにもかかわらず樹高が小さい個体がある事がわかった。また、伐採後の一次枝の成長に関しては、両区ともあまり差は見られなかったが、主幹における一次枝の位置(平均節間長)について、OPEN区では著しい成長を示す個体があった。このことからOPEN区においては一次枝の成長よりも樹幹の成長が促進されていることが示唆された。葉の形態としては、OPEN区の方がSHADE区に比べ葉が厚く、また窒素含有量も高くなっていたことから、OPEN区では陽葉化が進んでいることがわかった。

以上から、暗い林床に成育していたヒバ稚樹は、ギャップ形成後8年経過した段階では稚樹高の成長促進は17cm程度に過ぎず、光環境の改善が成長促進に表れるまで比較的長期間を要するといえる。しかし、主軸の節間成長の促進、着生葉の陽葉下など、強光に対する形態的適応が行われていることから、今後の成長は十分に期待できると思われる。ヒバ前生稚樹を後継樹として育成していく際には、長期的な視野を持って施業を行う必要があると考える。

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○早咲き・遅咲き何が、どう違うのか? -ショウジョウバカマにおける開花のタイミングに依存した開花行動と適応度-

森長 真一


植物はいつどのように花を咲かせればより多くの子供を残すことができるのか。開花のタイミングとそれに依存した開花行動は自然選択にさらされていると考えられている(Ollerton & Lack1992)。特に、早春のように短期間に環境が大きく変化する場合、各個体は花を咲かせるタイミング次第でまったく異なった開花環境を経験することになる。

ユリ科の多年生草本ショウジョウバカマは春植物のなかでも最も早くに咲きはじめる植物のひとつである。本研究ではこの植物を材料に、短期間のあいだに環境が著しく変化する時、早咲き個体と遅咲き個体で経験する環境にどのような違いがあり、それに対してそれぞれがどのような開花行動を示し、そして最終的に適応度にいかなる違いがあらわれるのか調査した。

ショウジョウバカマは個体あたり複数個の花をつけるが、各個体のすべての花は一斉に咲き始め一斉に咲き終わる。約一週間おきに良く晴れた日を選んでポリネーターを観察したところ、その訪花頻度は時期が後になるほど著しく増加した。花の寿命は積算温度に依存しているために、遅咲き個体ほど顕著に短くなった。また開花のタイミングと花数に一定の傾向はみられなかったが、花のサイズと負の相関が認められた。そしてたとえいつ咲いたとしても適応度に大きな差が生じることがなく平衡状態であった(早咲き、遅咲きどちらが有利でもない)。

温度依存的な花の寿命は、同じく温度依存的に出現してくるポリネーターにマッチしていると考えられる。また開花のタイミングと花サイズの関係はその時期のポリネーター頻度や適応度の稼ぎ方(花粉親か種子親か)と関係があると思われる。得られる適応度はこれらが総合的に関係しあい、いつ咲いても大きな違いが生じないのだと考えられる。また開花のタイミングが遺伝する可能性を調査し、開花のタイミングに依存した開花戦略をより明確に示す必要がある。

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○Low Temperature Enhanced PhotosyntheticDown-Regulation in Bean ( Phaseolus vulgaris L.) Plants

Tsonko Tsonev


The mechanisms of photosynthetic adaptation to different combinations of growth temperature and irradiance and especially the consequences of exposure to brief high-light treatments (2 mmol m-2 s-1 PPFD) for 5 min) simulating natural sunflecks was studied in bean plants (Phaseolus vulgaris L.).

We investigated the ability of plants to tolerate high irradiances (such as found in sunflecks) under conditions when utilisation of the reducing power generated by photosynthetic electron transport in carbohydrate production and growth is limited by low temperatures.

Responses were compared in plants grown at normal (22oC) and low (10oC) temperature after acclimation to different growth irradiances for six days.

Our data showing a decreased quantum efficiency of PSII and decreased rate of CO2 assimilation under high light at low temperature are evidence for significant down-regulation in the photosynthetic apparatus due to photoinhibition in low-light grown plants. There were also indications of greater oxidative stress at low temperature/high light conditions with an increase in H2O2 and slight decreases in activities of catalase and peroxidase. The close correlation between the thermal dissipation in the antenna (1-Fv'/Fm') and de-epoxidation state of the xanthophyll cycle (the ratio (A+Z)/(V+A+Z)) supports the hypothesis that xanthophyll cycle activity makes an important contribution to quenching of excess energy.

Low O2 enhanced the PSII down-regulation in low temperature-acclimated plants, expressed by decreasing Fv/Fm ratio, FPSII and electron transport rate, but minimised the further inhibition by the mild "photoinhibitory" treatment used.

These results support the hypothesis that photorespiration provide a "safety-valve" for excess energy which cannot be replaced by compensating increased CO2 fixation.

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○コナラ・アベマキにおける奪葉後の窒素経済

彦坂 幸毅


植食者は植物の成長や分布に大きな影響を及ぼしていると考えられる。植物は被食を回避するために様々な防御機構を持つ。化学的な防御としては、タンニンなどの二次代謝物質の蓄積、窒素濃度を低下させることによって葉の価値を下げることなどがよく見られる。二次代謝物質の蓄積量や窒素濃度は種間だけではなく、種内でも大きく変化する。強い被食の後に残された葉、あるいは新たに出現した葉で、二次代謝物質の蓄積や葉の窒素濃度の低下が見られる。このような被食応答は誘導防御と呼ばれ、さらなる被食を回避するための応答と考えられている。

誘導防御を引き起こす仮説はいくつか知られているが、その中の有力な仮説として炭素−栄養塩バランス(CNB)仮説がある。葉は他器官よりも高い窒素濃度を持つため、個体レベルで見ると、葉を失うことは窒素不足・炭素過剰状態をもたらす。植物はこの状態への応答として窒素濃度を下げたり、炭素化合物であるタンニン量を増やしたりすると考えられている。窒素施肥や被陰など、人為的にC/Nバランスを変化させる研究では、葉窒素濃度やタンニン含量にCNB仮説が予測するような変化が報告されている(例外もあるが)。

植物生理生態学では、C/Nバランスについてより詳細な研究が行われている。例えば窒素栄養条件が変化すると地上部/地下部比など様々な形質に変化が起こる。最適化モデルを用いた理論研究などにより、これらの応答の適応的意義も示されている。我々は生理生態の手法を被食防御応答の解析に応用することにし、コナラとアベマキの当年生実生を異なる栄養条件で(0, 0.1, 1 g N/wk)で育成し、奪葉処理(100%奪葉)を行った。当年生実生を用いたのは、個体レベルでの解析を意図したためである。これまでの研究では、比較的大きな個体を用いているため、地上部/地下部比などの解析があまり行われていない。

奪葉処理後の個体は、予想に反し、高い窒素濃度を持った。葉の窒素濃度は奪葉前を上回り、個体窒素濃度ですら非奪葉個体の値を上回った。驚くことに、この結果は無施肥個体でも見られた。これらの結果は、奪葉によって窒素を失う以上に、葉がない期間中の呼吸による炭素損失が大きかったことを示唆する。さらに、個体窒素濃度を個体C/Nバランスの指標とし、地上部/地下部比などのアロメトリーを比較した。奪葉個体の挙動はC/Nバランスの変化だけでは説明できず、別の観点が必要であることが示唆された。

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○中間温帯林における異なる階層に生育する落葉種と常緑種の窒素利用効率

遠藤 裕美

植物の成長にとって、光や二酸化炭素、水、無機塩類は制限要素である。無機塩類の中の窒素は光合成を触媒する酵素の構成要素であり、特に欠くことの出来ない重要な制限要素の一つである。しかし、自然生態系では植物の利用可能な状態である無機態窒素は土壌中に不足しがちであり、その上根や葉などの植物各部の枯死や繁殖によって植物は絶えず窒素を失ってしまう。このため得られた窒素をいかに効率よく用いるかということは他種個体との生存競争を生き抜く上で大切な課題となってくるはずである。このことは窒素利用効率(NUE)というパラメーターによって表現することが出来る。窒素利用効率は、植物の保有窒素あたりの成長速度である窒素生産性(NP)と植物が吸収した窒素を体内に保ち続ける時間の平均である植物体内における窒素の平均滞留時間(MRT)との積によって表すことが出来る。Yasumura(2001)は冷温帯に属する青森県八甲田山のブナ林において、群落の上層と下層に生育する落葉性木本3種の窒素利用効率の研究を行った。宮城県は中間温帯林に属し群落の上層と下層に落葉種と常緑種の混合する植生の見られる。常緑種は一般に落葉種よりも寿命が長いことが先行研究により示唆されており、MRTが長くなることが予想される。本研究では、中間温帯林の以上のような環境で窒素利用効率に違いがみられるか調査していくことにした。


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○繁殖コストとしての葉の老化とその最適繁殖開始時期への影響

志鷹 幸徳

多くの一年草は繁殖成長に伴い窒素を栄養器官から繁殖器官へ再分配する。この再分配は、生育期の終わりには失われてしまう栄養器官から窒素を回収することで、繁殖器官への窒素投資を増大することに貢献していると考えられる。一方で、栄養器官からの窒素の転流は個体の老化(Monocarpic senescence)を促し、繁殖収量を制限する要因になっているはずである。

それでは、窒素の転流は一年草の繁殖収量にコストとしてどれだけの影響を与えているのだろうか? このような影響は、窒素が転流しない場合と比較することによって推定できる。同様に、窒素の転流による繁殖器官の窒素増大も窒素が転流しない場合と比較することによって推定できる。

葉の窒素は植物の乾重生産速度を大きく律速している。よって、葉の窒素と乾重生産の関係をもちいて、葉の窒素が転流する場合としない場合の乾重生産量をシミュレートできる。今回のセミナーでは、オオオナモミを日長制御により7月下旬、8月下旬、9月下旬に開花させた個体(それぞれ、EF、MF、LFとする)の成長データをもちい、窒素の転流が繁殖に及ぼす影響とその開花時期による変化を解析した結果を報告する。

開花以降の乾重生産量が繁殖収量(Yw)であるものとみなし、実際の植物(窒素の転流が見られる:case 1)と仮想的な窒素の転流がない場合(case 2)の乾重生産量を葉の窒素濃度から計算した。case 1では、Ywは開花が遅くなるほど増加し、EFで最も低く、MF・LFはほぼ同じ(EF2.0,MF3.1,LF3.2g)であった。一方、case 2では、YwはEFからLFにかけて減少した(EF8.9,MF6.1,LF3.0g)。case 1とcase2を比較すると開花が早いほど窒素の転流によるYwの低下が大きいことがわかる。また、case 2において、もっともYwが高くなるのは7月上旬であった(9.6g)。これらの結果から、窒素の転流はYwを低下させるとともに、Ywを最大にする最適な開花時期にも影響を与えていることが示唆された。

このようにcase 2はcase 1に比べより大きなYwが得られることが明らかになったが、逆に繁殖器官への窒素投資量(Yn)は低下するのだろうか?Ynは開花以後の窒素吸収量と栄養器官からの転流量の和で表される。今回の栽培ではオオオナモミの窒素吸収速度は生育期間を通してほぼ施肥速度に律速されていた。このような生育条件では、結果だけを述べると、MFにのみ窒素の転流によるYnの増大の効果が見られ、EFではcase 1、case 2のどちらもほぼ同じYnになった。case 2ではさらに早く開花するとそれだけYnは増加し、case 1よりもYnが大きくなった。

これらの結果(つまり、今回の栽培条件ではオオオナモミはより早く開花することにより、窒素を転流しなくても転流した場合より大きなYw、Ynが得られる)から、必ずしも窒素の転流が繁殖の増大にはつながらないことが示唆された。オオオナモミがなぜ窒素の転流をしているのかについて、生育環境からの考察を試みた。


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○葉のフェノロジーと生理生態的特性 〜葉が生まれてから枯れるまでのコストとベネフィット〜

及川 真平

葉は基本的には炭素を獲得するための器官であると考える。それゆえ、葉の寿命は個体の炭素獲得を最大化させるように決まるということが、多くの研究者によって示唆されてきた。植物が得ることのできる炭素は、光合成によって獲得した炭素から、葉を作りそれを維持し続けるのに必要な炭素(葉を構成し維持するために呼吸で出ていく炭素)を差し引いたものと考えられる。ある1枚の葉をいつまでも持っていると、葉の光合成速度が低下し、維持呼吸がそれを上回ってしまう。そのため、植物は葉をいつかは枯らし、新しい葉に付け替える必要がある。いつ葉を枯らして新しい葉に作り替えれば植物の炭素獲得が最大となるのか(最適な葉の付け替え時期、最適な葉寿命)、については複数の説が提示されてきているが、いまだ統一されていない。

葉の寿命と炭素獲得の関係を知るためには、まず各葉が生まれてから枯死するまでに獲得した炭素や呼吸で出ていった炭素を定量化する必要がある。葉の炭素獲得を知るためには、葉の時間的配列(リーフ・フェノロジー)と、葉の空間的配列(葉の位置、葉をとりまく光環境)の両方を考慮する必要がある。例えば、陽生草本のように次々と葉をつくる植物では、つぎつぎと葉を作りより先に出現した葉はより後に上方に作られた新しい葉によって被陰される。光は光合成に必要な資源であり、葉が吸収する光量は葉の炭素獲得に大きく影響する。しかしながら、このような葉の光環境の変化を長期間にわたって測定することは非常に困難であるため、これまで葉が生まれてから死ぬまでの炭素獲得量を測定した例はほとんどない。

そこで本研究では、葉のフェノロジーを追跡する手法に、葉の位置・環境を測定しどのような炭素獲得が行われるのかを明らかにするための生理生態学の手法である「群落光合成モデル」を適用する。このモデルでは、その群落が持つ葉面積と各葉の位置(群落上部から葉までの距離)を測定すれば、Beerの法則を用いることで各葉が吸収する光量を知ることができる。そして葉の窒素含量と吸収光量から葉の光合成量(ベネフィット)を求めることができる。また、各葉の窒素含量と暗呼吸速度には正の相関があることから、夜間に呼吸で消費される炭素量(コスト)を知ることができる。繰り返し葉の消長を追跡するフェノロジーの手法と、「群落光合成モデル」の手法を組み合わせることによって、個体内の各葉が生まれてから枯死するまでのあいだに得るベネフィットと、呼吸で出ていく炭素コストを定量化することが可能となる。

群落光合成モデルを適用するために、材料として単一種からなる草本群落(キク科オオオナモミ)を用いた。この草本群落では、つぎつぎと葉を作り、より先に出現した葉はより後に上方に作られた新しい葉によって被陰される。この順次展葉型の草本群落では、植物が成長するのに従って植物群落が持つ葉面積は大きくなり、群落内に存在する各葉が受ける光の量は減少していく。群落の葉面積がまだあまり大きくない生育期間初期の葉は、葉同士の相互被陰が比較的小さく、より長い期間炭素獲得を行うことができると考えられる。一方、群落が発達し、相互被陰が大きくなる生育期間後期の葉は、より急激な光資源の低下を被ることになる。このような光資源の低下は、葉の光合成速度を低下させ、そして各葉の一生の炭素獲得を減少させると考えられる。

今回のセミナでは、この手法を用いての(1)各葉が生まれてから枯死するまでの 炭素獲得(ベネフィット)と炭素支出(コスト)の定量化の結果、(2)より早く出た葉とより遅く出た葉の吸収光量、炭素獲得、寿命の比較の結果、について報告する。


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○高CO2が植物群落の物質生産に及ぼす影響

アラマス

将来、大気CO2濃度が現在のおよそ二倍700ppmになる。植物群集は陸生生態系におけるCO2の重要なシンクであり、将来の地球温暖化を緩和するように働く(CO2固定)と期待されている。そのため、CO2濃度上昇に対する植物群落の応答の解明は、地球環境レベルで重要な問題になると考えられていた。

植物の高CO2 への応答についてはよく研究されてきた。一般的に、ある範囲ではCO2が上昇すれば光合成速度も増加すると考えられる。しかし、いつも同じ促進とは限らない。短期的なCO2 上昇が光合成速度を増加するが、長期的なCO2 上昇で光合成の促進程度が減少&葉の光合成特性も変化してしまうことも知られている(Arp WJ 1991)。

一年生草本シロザ(Chenopodium album)を東北大学実験用圃場で

で栽培した。

具体的には、高CO2が群落光合成モデルの幾つかのパラメーターへの影響を通じて群落光合成が異なる生育段階での変化を示したことである。

結果から栄養段階、高CO2でより大きなLAIが持つため、繁殖段階では 高CO2でより高いPNUE持つため高CO2が植物の各生育段階の群落光合成を増加させていた。


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○Photosynthetic acclimation of an evergreenunderstory plant, Aucuba japonica, to seasonal environment indifferent light regimes.

Onno Muller

In temperate regions the temperature varies widely during the year. Also the light conditions are changing with the seasons especially in the understory of a deciduous forest. The photosynthetic apparatus can acclimate to changing light and temperature to improve its performance.

It is well known that shade leaves invest more nitrogen in the light-harvesting chl-protein complexes while sun leaves invest more in the Calvin cycle enzymes. Recently knowledge is accumulating on the temperature acclimation: several studies have suggested the similarity between photosynthetic acclimation to high light conditions and that to low temperatures. However, the implications under natural seasonal environments are still unclear, particularly in nature when light and temperature change simultaneously in a year. This makes separating the two effects important.

In the present study, to separate the effect of light and temperature on the photosynthetic apparatus in natural seasonal environment, we studied plants growing under different light regimes. We conducted field measurements of photosynthetic characteristics of an evergreen understory shrub, Aucuba japonica, in northern Japan. Occurring, both in gaps and under deciduous and evergreen forests Aucuba japonica experiences different light climates during the year.

Photosynthetic characteristics, such as photosynthetic capacity, leaf nitrogen content, ribulose-bisphosphate-carboxylase/oxygenase and chlorophyll a/b ratio, were in general well correlated with both light intensity and temperature that the leaves experienced. Multiple regression suggested that change in photosynthetic components is dependent on temperature and light. We conclude that the interaction between temperature and light is responsible for the acclimation of the photosynthetic apparatus to seasonal environments


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○季節変化がイタドリの光合成のCO2応答に与える影響

小野田 雄介

CO2濃度上昇はC3植物の光合成速度を増加させる。CO2濃度が変化すると、光合成速度を決定する要因が代わることが知られている。現在の大気CO2濃度のような低いCO2濃度では、光合成速度はルビスコ(RuBPをカルボキシル化する酵素)の活性によって決定(律速)されるが、CO2濃度が高くなると光合成速度はRuBPの再生速度によって律速されることが知られている。ルビスコ律速時の光合成速度は、RuBP再生律速時の光合成速度よりも、CO2に対する応答が大きいので、2つの律速要因のバランスが光合成の高CO2応答の程度を決定する。Wullschleger(1993)による109編の文献サーベイでは、2つの律速要因のバランスは種や生育条件に依存しないことが示された。しかしながら、最近の研究では、生育温度が2つの律速要因のバランスに有意な影響を与えることが示された。そこで私は、季節に伴う温度変化が、光合成の高CO2応答を変化させているのではないかという仮説をたてた。

野外に設置されているOTC(オープントップチャンバー)を使用し、イタドリを2つのCO2濃度(370,700ppm)で生育させた。光合成測定は、8 月と10月に行い、その時期に完全展葉した若い葉を用いた。また異なる時期の葉の光合成能力を比較するために、光合成測定は飽和光強度、25度で行った。

生育環境CO2濃度での光合成速度は、8月の葉において、高CO2生育が大気CO2生育よりも34%高く、また10月の葉においては50%高かった。同じ CO2濃度で光合成速度を比較すると、2つの測定時期ともに高CO2生育の方が低く、高CO2による下方制御が見られた。その下方制御の程度は両時期ともに同程度であった。期待していたように、10月の葉ではRuBP再生能力がルビスコ能力に比べて増加していることがわかった。そしてこれがRuBP再生能力の制限を緩和し、10月の葉が高い光合成の高CO2応答をもった原因であった。私はさらに、ガス交換から測定された2つの律速要因の能力が光合成タンパク質のレベルで裏付けることができるかを調べた。ガス交換から測定されたルビスコ能力はルビスコ含量と、そしてRuBP再生能力はシトクロームf含量と強い相関があり、これらの光合成タンパク質が2つの律速要因の能力を決定していることを強く示唆した。


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○卒業研究中間発表・蜜の分泌戦略とポリネータの行動

熊野 寛子

植物は送受粉を他者に委ねている。そのため、動物媒花では、ポリネータに花粉・蜜を報酬として与える。しかし、動物媒花であるにもかかわらず、無報酬の花も存在する。そのような花は動物にとって魅力がないため、訪花されにくく、進化しにくいと予想される。しかし実際には無報酬の種も多く存在するのはなぜだろうか?

無報酬とされている種でも、ポリネータに訪花させるため、ある確率でごく少量、蜜を分泌するなど工夫しているのではないだろうか?

これを検証するため、ハクサンチドリを用いて以下のことを行った。

  1. 蜜分泌の確認
  2. ポリネータ観察

結果

  1. 蜜は分泌されていないようだった
  2. 訪花頻度は低かった

今回の研究では方法などに問題があり、データを充分にとることが出来なかった。よってそれらの反省点を中心に報告する。


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○卒業研究中間発表・フィールドにおける個体間相互作用の測定

浅井 一宏

群落内で生活する植物にとって、周りの個体との相互作用は大きな意味を持つ。今までも個体間相互作用と、食物構造の関係については論じられてきたが、相互作用の具体的な数値化は行われていない。本研究では、個体間相互作用の数値化と、求めた相互作用値と群落構造の関係を明らかにすることを目的とする。

中間発表では、今までの作業の流れと、今の時点で出ているデータを紹介していく。


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○卒業研究中間発表・雄性先熟集団において、雄期間、雌期間の長さは変化するのか?

平賀 智之

両性花をつける植物には一つの花内で、雄と雌を時間的に分ける、雌雄異熟性のものがある。雌雄異熟集団において開花初期と後期では性比が偏ることが予想できる。例えば雄性先熟集団の場合、開花初期は雄の割合が多く、逆に後期は雌の割合が多くなるだろう。そのため早咲き個体は雌としての繁殖成功は期待できるが、雄としての繁殖成功はあまり期待できない。遅咲き個体は全く逆である。このような場合、植物が取る戦略は早咲きか遅咲きかによって異なるはずだ。初期に咲く花は雌器官に多く投資し、後期に咲く花は雄器官に多く投資する例がある。雄期間、雌期間の長さは、交配相手が豊富な時期は短縮されるかもしれない。

そこで私は集団中の性比の変化に対応して、雄期間、雌期間の長さが変化するのではないかと考え、雄性先熟であるホタルブクロを用いて調査した。

結果

考察

今回はあまり計画を立てずに調査を行ったため、十分なデータがとれなかった。そのため来年度の計画を中心に報告する。


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○卒業研究中間発表・奪葉による植物内C/Nバランスの変化

富居 豪

植物は外的から身を守る手段として様々な被食防御を取ることが知られている。しかし、防御機構にコストを分配すると、光合成に使う窒素が減少して光合成能力が下がり、結果的に成長速度が落ちることも知られている。

本実験では、コナラについて、被食防御機構が働いた際にどのような戦略を取るかということを、昨年彦坂さんが行った実験を元と比較しながら調べることを目的とする。

今までの論文ではコナラは、奪葉とともに葉内窒素を減少させるという研究結果が報告されてきているが、昨年彦坂さんが行った実験では、そのような先行研究の結果と同じとは言えない結果が出たので、実生コナラ、を用いて彦坂さんがやった実験について追加考察(?)をする。


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○ツリフネソウにおける集団密度に依存した性投資

岩泉 正和

植物集団の大きさや個体密度は、個体の持つ資源量や集団内での交配相手の数などに影響を及ぼす。そのためこれらの集団特性に依存して、個体サイズや訪花昆虫の行動を介することにより、個体の繁殖投資は集団毎に分化しているかも知れない。本研究では、生育地が幾つもの小集団に分断されているツリフネソウを対象に、集団特性と繁殖投資の関係を調べた。

野外調査は、宮城県仙台市・鈎取山治山の森の6集団を対象に2000年と2001年の2年間行った。各集団40個体をマークし、1個体当2〜3花を採取した。そして、集団の個体数・生育地面積・密度と、集団の個々の花重との関係を検証した。その他個体の根際直径を測定し、各集団では他殖率・近交係数を推定した。また、2002年には、実験園にて密度や花サイズを変えた集団をつくり、実験的に訪花昆虫の行動の介在を検証した。

野外調査の結果、個体密度の大きい集団ほど1つの花重が小さかった。そして密集団ほど近交係数が大きかった。また、個体サイズと花重の間には、集団間では弱い正の相関が見られた。実験園の訪花実験においては、花サイズの大きい集団で訪問個体数・訪花数が多かったが、密度処理では差が出なかった。

Cresswellら(2001)は、密度の大きい集団において、個体当の花数が減少したものの1花の重量は変わらなかったという報告をしている。しかし今回の結果は、今まであまり見られなかったパターンを示している。

野外調査と訪花実験の結果から考えると、密集団では資源量不足から1花への投資量が少なくなり、訪花頻度の低さから自殖や近親交配の増大がもたらされていることが示唆される。


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○異なる葉寿命をもつ種間における、光合成能力の差異の生理学的要因

高島 輝之

序章
窒素は光合成タンパク質を構成する主要な元素であり、葉窒素含量と光合成能力(最大光合成速度:PMAX)との間には強い相関が見られる。しかし、窒素あたりの光合成能力(PNUE:Photosynthetic nitrogen use efficiency)は種間で異なることが知られている。これまで、PNUEの種間差について研究が行われてきたが、その生理学的要因は明らかになっていない。本研 究の目的は、葉寿命の異なる種間における、PNUEの種間差の生理学的要因を明らかにすることである。
第1章 窒素あたりの光合成速度と葉の窒素分配の関係
Rubiscoは炭素同化を触媒する光合成の鍵酵素であり、葉におけるRubisco含量は光合成速度を律速する。第1章では、葉のRubisco含量に着目し、葉の窒素分配と光合成能力との関係を明らかにする。
<材料と方法>
ブナ科コナラ属から、落葉(コナラ、ミズナラ)、常緑(アカガシ、アラカシ)の4種の実生をポット生育し、光合成測定後サンプルを採取した。それぞれのサンプルにおいて、葉面積あたりの乾燥重量(LMA)、窒素、Rubisco、クロロフィル、構造性窒素、可溶性窒素、不溶性窒素の含量を測定した。
<結果と考察>
落葉種が常緑種に比べて約2倍のPNUEを示した。Rubisco含量は、常緑種が有意に低かった。クロロフィル含量から推測される集光系への窒素投資は種間で違いが見られなかった。構造性窒素含量とLMAは常緑樹が高い値を示し、常緑種は構造への窒素投資が高く、Rubiscoへの分配へ影響を及ぼしていることが示唆された。
第2章 Rubiscoあたりの光合成能力の差異の生理学的要因
第1章によって、Rubiscoへの窒素分配の違いによるPNUEへの影響が明らかになったが、それだけで2倍のPNUEの違いを説明するには至らなかった。その原因として、Rubiscoあたりの光合成能力の違いが挙げられる。その違いをもたらす要因として、葉緑体内CO2濃度、Rubiscoの比活性があげられる。第2章では、Rubiscoあたりの光合成能力の違いの生理学的な要因を検証する。
<材料と方法>
第1章で用いた4種の2年目の実生を材料とした。葉緑体内CO2濃度を推定するため、光合成測定と同時にクロロフィル蛍光の測定を行った。さらにリーフディスクと顕微鏡観察のための切片を採取した。
<これまでの結果とこれから>
細胞間隙から葉緑体までの拡散コンダクタンス(mesophyll conductance:gm)は、落葉樹が高く、葉緑体CO2濃度は常緑樹が低い傾向があった。gmの差異の要因として、葉の構造特性(細胞壁厚、細胞間隙に接する葉緑体の面積など)があげられる。今後採取した切片より、葉の構造特性の違いを検証する。また、Rubiscoあたりの比活性の測定を試みる予定である。

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○カエデ属はどのようにして光を獲得しているか?
:成長様式と葉身・葉柄・当年枝への資源分配の違いが光獲得に与える影響

大場 信太郎

カエデ属の植物は、その長枝・短枝の分化の度合いと枝の伸長様式により、

  1. 単軸分枝伸長型(ウリハダカエデ、ヒトツバカエデなど)
  2. 仮軸分枝拡大型(オオモミジ、ハウチワカエデなど)
  3. 単軸分枝拡大型(イタヤカエデ、テツカエデなど)

の3つの成長様式に分けられ、それぞれの成長様式で更新戦略が異なることが知られている(Sakai,1987)。

樹木シュートは主に葉身・葉柄・枝の3つの器官から構成されており、限られた資源をそれぞれの器官に分配することにより当年シュートが作られる。 Sakai(1987)では、枝以外の器官への資源投資は考慮されていなかった。しかし、カエデ属の植物を一見すると、それぞれの成長様式ごとに当年シュート構成の特徴が異なるようである。単軸分枝伸長型のフェノロジーは順次展葉型であるのに対し、仮軸分枝拡大型のフェノロジーは一斉展葉型である。また、単軸分枝拡大型は葉柄の長さが長いようである。この違いは、それぞれの生育環境に応じた最適の資源投資の結果なのであろうか?

本研究では、カエデ属12種において、当年シュートの各器官(葉身・葉柄・当年枝)への資源投資比をシーズン初期・後期の2回に分けて調べた。さらに、感光フィルムを用いて個葉の光環境の測定を行い、資源投資と光環境の間の関係を調べた。

また、単軸分枝拡大型の種で見られるような長い葉柄を用いたシュート構成のメリット・デメリットを調べるために、当年シュートの各器官への資源分配を考慮に入れたコンピュータシミュレーションを行った。

これらのデータを用いて、それぞれの成長様式での各器官への資源投資とその季節変動の意義を考察する。


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○オオシラビソの現在と過去における成長量の違い

福田 貴文

近年、地球規模で温暖化が進行している。産業革命が起こった18世紀後半から気温は徐々に上昇し、20世紀には平均気温が0.6℃増加した。今後21世紀中に1-5℃増加すると予測されている。こうしたことから、温暖化が起こったときの植物の応答を考えることは重要であるが、20世紀から現在までの温暖化が、森林生態系にどのような影響を与えるのかを扱った研究はほとんど知られていない。ヨーロッパアルプスでの研究(Paulsen et al. 2000)はPinus cembra、Picea abiesの成長速度が200年前には低かった森林限界付近での成長量が、年代とともに成長が速くなり現在は低標高とほとんど同じであることを報告している。こうした傾向がヨーロッパアルプス以外の地域・樹木で同様に生じるかは明らかにされていない。今年度は、岩手と秋田の県境である八幡平、および宮城と山形の県境である蔵王の2ヶ所のオオシラビソ(Abiesmariesii)を調査対象とした。各山において、亜高山帯上限付近(Highelevation)と、亜高山帯中〜下部(Low elevation)の2標高×3反復、計6サイトで肥大成長量を測定した。各サイトで、なるべく損傷のない、さまざまなサイズの非被圧木を選び、成長錐を用いて地上高80cmの位置でコアを採取した。コアから年輪幅を測定し10年分を平均してこれを年あたりの成長量とした。High elevationでは5年前(1-10年前の年輪幅の総和)・50年前(同46-55年前)を、Low elevationでは5年前・50年前・100年前(同96-105年)の成長量を比較した。また、昨年度に調査した北八甲田を加えて、計3つの山間で比較をした。

同じサイズクラスのデータを用いて分散分析を行った結果、High・Low両方とも、年輪幅は山間・サイト間・年代間で有意に違っていた。Highでは5 年前の年輪幅が、Lowでは50年前の年輪幅が大きかった。だが、山ごとに見ると、年代間の差はなくなっていた。


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○光阻害とわたくし

ひこさか こうき

強い光によって引き起こされる光合成系の傷害を光阻害といいます。植物は光阻害を防ぐために多くの防御系をもち、光阻害が起こらないようにしています。光阻害耐性(光防御能力)は、同一種でも生育条件によって異なりますが、様々な防御系の能力が生育条件によって同時に変化するため、どの防御系の違いによって光阻害耐性の違いがもたらされるのかは明らかではありませんでした。うちの研究室では加藤真晴くんがこの問題にとりくみ、光阻害耐性の解析の方法論を確立しました。彼は異なる栄養条件・光条件で育成したシロザの葉で各光防御系の貢献を定量化し、光阻害耐性の違いがどのようにして生じるのかを明らかにしました。

今年度前半にはブルガリアからTsonko Tsonev氏が来日し、5ヶ月間研究を行いました。彼は温度と光阻害に興味があったようなので、加藤くんの手法を使って、光阻害と光防御系の温度依存性を定量してもらいました。本来は彼に紹介してもらおうと考えていましたが、彼は離仙三日前までデータをとり続けていたのでそれはできず、かわりに私が紹介します。

この他にも、私自身光阻害について研究をしています。今年は光阻害が起こった葉がどのような光合成速度を持つのかを解析しました。

このセミナでは、なぜ私が光阻害に興味を持つようになったのか、どこまで明らかにしようとしているのか、ここ10年考え続けていることを紹介したいと思います。


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○種子の大きさと数のトレードオフ:ウバユリを用いた、Sakaiand Harada (2001) モデルの検証

酒井 聡樹

ウバユリを用いて、種子の大きさと数のトレードオフに関する Sakai and Harada(2001; Am. Nat. 157:348-359) モデルの検証を行った。このモデルは、仔の大きさと数のトレードオフは非線型であり、一腹の仔の総重量は、個々の仔が大きいほど減少し、仔の数が多いほど増加すると予測する。これは、仔の生産中の維持呼吸による資源消失が、大きな仔を作るほど多くなり、仔の数が多いほど少なくなるためである。

【方法】宮城県青葉山のウバユリ二集団を対象に以下の測定を行った。親個体の根際直径を測定し、花期終了時と種子生産完了時の個体乾燥重量を推定した。種子散布直前に各個体から種子を回収し、種子の乾燥重量と生産種子数を測定した。また、花期終了時と種子生産完了時の推定個体乾燥重の差から、種子生産期間中の呼吸量を推定した。

【結果】親個体の大きさ(種子生産に投資する資源量)の違いの影響を排除して解析を行った結果、以下のことがわかった。

【結論】結果は、Sakai and Harada モデルを支持する。資源利用効率という点では、個々の種子を大きくすることよりも種子数を増やすことの方が有利である。


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○雪田植物チングルマにおいて開花フェノロジーが種子生産と性投資に与える影響

辻沢 央

一般に、冬季の積雪量が多く雪解け時期が遅い高山帯の雪田環境では、雪解けが遅れるほど種子の成熟に費やせる期間が短くなる。そのため、種子生産に投資できる資源量が制限を受け、そのことが雌雄器官への性投資比に影響する可能性がある。しかし、雪田植物の繁殖について、種子生産との関連から性投資比を評価した研究は少ない。

そこで本研究では、雪田に生育する両性花植物チングルマ( Sieversia pentapetala ) の雪解け時期の異なる3集団において、種子への資源投資量と花期の性投資比を調べた。調査は、青森県八甲田大岳の標高約1300mに位置する薬谷雪田にて行い、それぞれの集団においてフェノロジーの記録、開花時のシュートと散布直前の種子の採集、各器官毎の乾燥重量の測定を行った。

雪解けが遅い集団ほど種子成熟期間は短かった。種子成熟期間の長さとシュートあたりの平均種子重量(総種子重量/種子数)の間には正の相関が見られた。しかし、種子の数とS/O比に集団間で有意な差が見られなかった。ポリネーター量は雪解けが早い集団ほど少ないのに対し、開花期間の長さは雪解けが早い集団ほど長かった。開花期においては、雪解けが遅いほど雌器官への資源投資量は減少したが、雄器官への資源投資量は変化しなかった。

種子の大きさは種子生産期間の長さに強く依存する事から、雪解けが遅い集団では花期に雌器官へ投資しても十分に大きな種子を生産できず、その見返りが小さくなる。そのため、花の雌器官への投資は雪解けが遅い集団ほど減少したと考えられる。一方、雪解け時期が早い集団では、開花期間の長さを延ばすことによって少ないポリネーターによる花粉不足を補っている事がわかった。また、雪解けが遅い集団ほどポリネーター量が増加したにも関わらず、花期の性投資量は雌雄両器官で増加しなかった。以上より、チングルマの花期の性投資量はポリネーター量に影響を受けない事が示唆される。


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○「キバナアキギリにおける最適な花序の大きさと数 〜花茎への資源投資コストと送受粉効率からの評価〜」

三宅 康子

ポリネーターの訪花行動は花の空間配置の影響を受け、複数の花序に花を分散させるとポリネーターの誘引効果が高まることが知られている。一方、花序を支えている花茎の構成に必要な資源投資コストは、花序の大きさ(花数)によって異なるだろう。では、どのような大きさと数の花序を作れば、低いコストで高い送受粉効率を得られるのだろうか。

本研究では、様々な大きさと数の総状花序を持つキバナアキギリを対象とした。ポリネーターであるトラマルハナバチの訪花行動を観察し、開花期間終了後に花茎への資源投資コストとして花茎重を計った。

その結果、株への訪問頻度は花序数が多いほど高くなるという傾向が得られた。

一方、

  1. 個々の花序の大きさは変えずに、新たに小さな花序を付け足した場合
  2. 花序の数は変えずに、個々の花序を大きくした場合

のそれぞれに必要な資源投資コストの間には、有意な差が見られなかった。

以上より、花を分散させるとき、花序の大きさよりも数を増やすという戦略をとったほうが花序の大きさをどんどん増やしてしまうよりも適応的であると結論した。


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○ミヤマタムラソウにおける、親個体サイズに依存した繁殖資源分配の解析−姉妹間競争の影響−

高橋 邦彦

植物の繁殖様式は多様であり、これを説明するために性配分理論(Sex allocation)が用いられてきた。この性配分理論は♂、♀各機能の適応度利得曲線を基にして議論される。この適応度利得曲線について、♀機能に関しての定量的な報告は少ない。また種子の散布能力が低い種において理論的に言われる姉妹間競争の影響はほとんどないという報告がある。よって♀機能の適応度利得曲線は直線であるという考えが主流である。ところが、これまでの姉妹間競争の調査方法には問題があった。

本研究はこれを改善して、姉妹間競争の調査をシソ科多年生草本ミヤマタムラソウを用いて試みた。また、姉妹間競争が生じるような種における♀機能の適応度利得曲線のパラメーターを測定した。

結果は、親個体サイズの増加とともに、親個体の実生の姉妹間競争におかれる確率が有意に高くなった。また実生の密度依存性の死亡が確認された。 一方親個体サイズと実生の生存数との間には有意な相関が見られなかった。このことから♀機能への最適な資源分配は、親個体サイズが大きくなっても生産種子数をあまり増やさないことが予想される。しかし親個体サイズとともに生産種子数は有意に増加した。

以上より、♀機能の適応度利得曲線に対する姉妹間競争の影響が示唆された。


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○個体間相互作用がマルハナバチの採餌範囲を狭めているのか? 〜閉鎖系における他個体除去実験による検証〜

牧野 崇司

マルハナバチの採餌範囲に影響する要因を調べた牧野&酒井は、マルハナバチが互いに異なるような採餌範囲を持つ傾向にある可能性を示した。もしハチ個体間の相互作用が採餌範囲の決定に関わるならば、同時に採餌するハチ個体の数が多くなるほど採餌範囲が狭くなり、ハチ個体数が少なくなるほど採餌範囲が広くなることが予測される。本研究では、閉鎖系における他個体除去実験を行い、この予測の検証を行った。

実験は、縦 20m × 横 20m × 高さ 2 m の網製テントの中に植物(ブルーサルビア)を配置し、そこに農業用クロマルハナバチを放して行った。まず、テント内で採餌している20頭前後のマルハナバチのなかから数頭をランダムに選び、その株間移動を追跡した。さらに、その中から比較的狭い採餌範囲を持つ1個体を選び、それ以外のハチ個体を全て取り除いた。そして、個体間相互作用のない状況下で、対象ハチ個体の採餌範囲がどのように変化するのかを調べた。これを、5個体のハチについて行った。

他個体を除去すると、マルハナバチは、これまでほとんど訪れなかった株にも訪れるようになった。つまり、いちど採餌範囲を狭く限定したハチ個体でも、他個体との相互作用がなくなると、その採餌範囲を広げることがわかった。この結果は、ハチ個体間の相互作用がマルハナバチの採餌範囲の決定に関わることを裏付けるものである。また、結果は、マルハナバチが他のハチ個体の採餌状況に柔軟に対応し、その採餌範囲を調節できることを意味している。この相互作用は植物上の資源量を介して行われていると考えられるが、詳しくは不明であり、その解明が今後の課題である。


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○積雪傾度による樹木の伏条繁殖特性 −積雪が樹形と森林の遺伝構造に与える影響−

池添 綾香

世界有数の多雪地域である日本は、日本海側−太平洋側に明瞭な積雪傾度の違いが生じる事で知られている。この積雪傾度に対応し、植生の違いや植物の形態の違いなどが影響を受ける事が古くから知られており、さまざまな研究が研究がなされている。しかしそのほとんどが異種、近縁種間の比較によって行われており、それらの違いが本当に積雪環境に応答した結果生じた違いなのかは明らかになっていない。

本研究では積雪傾度の異なる地域に分布するヒノキアスナロを用い、伏条繁殖(栄養繁殖の一つ)に着目し、積雪が本当に伏条繁殖に影響しているかを樹形から判断した。もし積雪が本当に伏条繁殖に影響を与えているならば、多雪環境で枝はより大きく湾曲し、枝が接地・発根しやすくなるよう枝基部の肥大成長より枝長の伸長成長を優先させるだろう。また、サイト間で、ある一定の資源を持つとするならば、主軸と枝との間に資源分配(allocation)が生じるかもしれない。

調査した結果、枝の接地・発根による伏条繁殖は、多雪になるほど多くなる傾向が得られた。それに伴い、枝の湾曲ぐあいは少雪地域に比べた雪地域で大きい傾向にあった。これは多雪環境において枝が積雪荷重を受け、より曲がっている事を示唆している。しかし枝基部と枝長のallometryは中間地域で最も大きく、多雪−少雪地域間での違いはほとんどなかった。これは枝の形態がサイト間で積雪に関係しない事を示している。最後に主軸と枝とのallocationだが、多雪になるほど主軸への資源分配が多かった。これは積雪によって寒風や低温から保護されたのかもしれない。

以上の事から、少雪地域に比べ多雪地域では枝自体の形態は変化しないものの、より大きな積雪荷重をうけ接地しやすくなっており、また、樹高成長も促進される事がわかった。今後はこの結果を踏まえ、伏条繁殖のしやすさが森林の遺伝構造にどのように影響しているのかについて検討する予定である。


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○八甲田山田代平のCO2springにおけるCO2環境と植物の生理生態学的特性

小野田 雄介

大気CO2濃度増加が植物に及ぼす影響については、これまで多くの研究があり、個体の生理特性や成長の高CO2応答はかなり理解が進んできている。しかしながら、これらの実験結果を自然生態系に応用するためには、まだ明らかでない点がいくつかある。1つは、植物の高CO2順化には長い時間がかかることが知られており、実験系では実現できない長期間の高CO2に対してどのような応答をするか分からないこと。2つめに、高CO2環境では、高CO2に適応した遺伝型が選択されてくる可能性があり、それらは現在の植物と異なる応答を見せる可能性があること。3つめに、植物だけでなく、捕食者、分解者も存在する自然生態系に高CO2がどのような影響を及ぼすのか分からないことである。

これらの困難な問題は、CO2spring周辺の植物を研究することによって解き明かすことができる。CO2springでは、長年に渡り火山ガス由来の CO2が湧き出しているため、付近の植生は高CO2に順化または適応していると考えられる。私は青森県八甲田山田代平において、天然の植生が多く残っており、さらに有害なガス(H2SやSO2)を出していない良好なCO2springを調査した。

6月から10月までの5ヶ月間、毎月3-4日間、高さ1mにおけるCO2濃度の観測を複数の地点で行った。CO2濃度はCO2springに近い場所で常に高く維持されており、約50m離れると大気CO2濃度に低下した。CO2濃度勾配に従って、調査地区をHC(平均640ppm)、MC(平均 440ppm)、LC(370ppm)の3つに分け、それぞれから自生している3種の植物(ノリウツギ、オオイタドリ、チシマザサ)の葉を採取した。光合成産物であるデンプンは、HCで高い傾向があった。また光合成タンパク質含量の指標である窒素含量は、HCで低かった。これらの結果は、これまでの多くの制御環境実験の知見と一致する。本研究ではまたオオイタドリの光合成測定結果から、高CO2に適応しているかを議論する。


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○葉群内における個葉、葉面積、窒素のターンオーバー

及川 真平

葉群は、光合成産物を使って葉が作られるのと同時に、枯死による葉の損失が起こる動的なシステムである。また、多くの生態系で植物の成長を律速する資源である窒素についても、根からの吸収と落葉による損失によってターンオーバーが起こっている。葉と窒素のターンオーバーは、生態系の物質循環、植物の物質生産や適応戦略を考える上で重要な要因であると考えられている。これまでにこれらのターンオーバーを調べた研究では、全てのパラメータを実測しているわけではなく、いくつかの仮定を用いることによってターンオーバーの推定を行っている(例えば、損失と増加が同じ速度で起こっている、枯葉の窒素濃度が一定である、など)。本研究では、このような仮定を用いず、実測データのみによって葉と窒素のターンオーバーを測定すること、さらに、これらが葉群の発達段階や窒素栄養条件によってどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。

本研究では単純なモデル系として一年生草本のポット群落を用い、葉数、葉面積、窒素の増加と損失を栄養成長期間全体にわたって詳細に追跡した。葉数は枯死が始まるまでは増加し、その後は葉の生産と枯死が同じ速度で起こったため現存葉数は変化しなかった。一方、個体の現存窒素量は時間とともに増加し、定常状態には達しなかった。これは主に、枯死葉からの窒素回収が大きく、体外への損失速度が吸収速度を大きく下回ったためであった。栄養条件間で窒素回収効率には差が見られなかった。そして枯葉の窒素濃度は貧栄養条件で小さく、そのため窒素のターンオーバー速度は貧栄養条件で小さかった。


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○雄性先熟集団において、集団の性比の変化に対応して、♂、♀期間の長さが変わるのか?

平賀 智之

両性花をつける植物には一つの花内で、♂と♀を時間的に分ける、雌雄異熟性のものがある。雌雄異熟集団において開花初期と後期では性比が偏ることが予想できる。例えば雄性先熟集団の場合、開花初期は♂の割合が多く、逆に後期は♀の割合が多くなる。そのため早咲き個体は♀としての繁殖成功は期待できるが、♂ としての繁殖成功はあまり期待できない。遅咲き個体は全く逆である。このような場合、植物が取る戦略は早咲きか遅咲きかによって異なるはずだ。初期に咲く花は♀器官に多く投資し、後期に咲く花は♂器官に多く投資する例がある。♂、♀期間の長さは、交配相手が豊富な時期は短縮されるかもしれない。そこで私は集団中の性比の変化に対応して、♂、♀期間の長さが変化するのではないかと考え、雄性先熟であるホタルブクロを用いて調査した。

用語

雌雄異熟
両性花で雄機能と雌機能を時間的に分けること。
自殖や、♂器官と♀器官の干渉を防ぐために進化。
雄性先熟
♂ → ♀
雌性先熟
♀ → ♂

結果

今回はあまり計画を立てずに調査を行ったため、十分なデータがとれなかった。そのため来年度の計画を中心に報告したい思っています。


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○蜜の分泌戦略とポリネータの訪花行動

熊野 寛子

植物は繁殖のために花粉を媒介してくれる動物(pollinator)を必要とする。そのため、多くの虫媒花はポリネータに、花蜜や花粉などの報酬を与える。しかし、虫媒花であるにもかかわらず、ポリネータに報酬を与えない(騙す)種が存在する。

私はなぜそのような種が存在するのかに興味を持ち、騙しを行っていると考えられている種で、蜜分泌の確認とポリネータの行動観察を行った。

結果は蜜の分泌はなく、ポリネータの訪花頻度は低く、充分な行動観察ができなかった。

この結果をうけて、来年度は実験室内での蜜添加実験を計画している。また、フィールドでは個体数・調査地を増やして結果率などの基本的データをとりたいと考えている。


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植物生態研究紹介 > 2002年度 講座セミナー要旨