植物生態学講座・2007年度講座セミナー要旨 (08.2.28更新)


○ 形態的多様性に基づく熱帯樹木の共存機構の解明

 饗庭正寛

ボルネオ熱帯雨林の樹木を対象に、 (i)非パイオニア樹木種の稚樹の形態には物質分配の変異と 樹冠構造の変異という2つの独立した対立軸が存在すること、 (ii)物質分配の変異は生存率と成長速度の間のトレードオフを 介して空間的な光環境の異質性に依存した多種共存を可能にすること、 (iii)一方、樹冠構造のトレードオフは、時間的な光環境の異質性に 依存した多種共存を可能にする可能性があること、 などを紹介する。


○ ハイマツの生育型に対する環境ストレスの影響

 永野聡一郎

冬季の積雪は、植物の分布を決定する重要な環境要因である。日本で森林限界以上の地域は、一般にハイマツ(Pinus pumila Regel)群落が優占している。森林限界以上でハイマツの生育 型に注目すると、尾根筋や山頂など風が強く吹きつけ、冬季に雪が積もらない風衝地では、ハイマツの樹高は低く(20〜40cm)、幹は細く、枯れている枝が多いが、風が緩やかで冬に雪が深く積もる風背地では、樹高が高く(80〜120cm)、幹は太い。このように積雪深とハイマツの生育型は密接に関係していると考えられてきた。本研究は、冬季の積雪をはじめとする環境ストレスに対する樹木の応答について、特に生育立地に着目し、生育型の異なるハイマツが成立する機構を明らかにすることを目的とした。

生育型に差異をもたらす環境要因の作用機構を明らかにするため、二つの仮説による検証を試みた。第一に、積雪上のシュートが枯死するため風衝地のハイマツが生育型を低く留めるとする仮説について、冬季の環境ストレスを検証した。第二に、伸長・肥大生長のもとになる生育期間中の物質生産が風衝地では少なく、ハイマツは風背地のように大きく成長できないとの仮説を、シュートの現存量と光合成の測定によって検証した。

土壌が凍結し吸水が行えない冬季、風衝地において積雪から出たハイマツのシュートは、針葉表面のクチクラ層が飛散する氷雪や砂礫によって磨耗し、春先に乾燥を回避できず、早期に枯死する傾向があった。風衝地における木部の水分通導阻害は、針葉の乾燥を助長した。このため、ある立地で生存可能なハイマツの群落高は、その場所の積雪深以下で保護される高さに留められると示唆された。また、夏季の光合成を野外で測定した結果、風衝地の光合成速度が低下しており、冬季に受けた針葉の損傷による酵素活性の低下が原因であることが明らかとなった。シュート単位の非同化器官と同化器官の割合(C/F)は風衝地のハイマツにおいて低く、風衝地のハイマツは幹や枝への投資が制限されていた。以上のことから、風衝地のハイマツを矮性化させる要因は、冬季の環境ストレスとそれに続く物質収支の不均衡であり、積雪は日本の森林限界以上でのハイマツの生存および優占に不可欠な環境要因であると考えられる。


○ コンポストを用いた持続可能的な農村モデルに関する考察

 春増翔太

東北大学農学部付属農場(複合フィールド研究センター)をひとつの農村モデル と見立て、各種圃場をそれぞれ個別の農家と置き換えて農業、林業、畜産業等の 各産業間における資源循環モデルを構築し、持続可能性を探る。 資源としてコンポストに焦点を当ててみると、時期的・技術的な問題点により持 続可能的な資源循環モデルとして有効なものを構築することは困難であった。
○日本における森林の有用性の考察 -既存研究のサーベイを用いて- 日本における森林の利用法や有用資源に関する既存研究に関するサーベイ・リ サーチ。


○ つる植物の種による生活史の多様性

 東京大学日光植物園(D4) 市橋隆自

木本性つる植物(liana)は森林(特に熱帯林)の重要な構成要素であり、森林の生産、物質循環、更新等に大きな役割を果たしている。しかしながら近年、熱帯林の研究が進むまでは生態系の中のマイナーな存在として、ほとんど生態学的研究の対象とされて来なかった。最近ではコミュニティーレベルの知見は増えてきたものの、種や個体のレベルでの詳細な生態研究(成長や生活史、生理生態、多様性など)は驚くほど少なく、未だその生態には不明な点が多い。
私は(基本的に)日光の調査地で最も多く見られる木本性つる植物5種(サルナシ、ツルウメモドキ、マツブサ、ミツバアケビ、イワガラミ)を対象に、つる植物の生活史における多様性を明らかにすることを目的として研究を続けてきた。さらにはその多様性を踏まえた上で、自立した樹木に対して「つる植物」という戦略はどのようなものなのか、その利点と制約を明らかにすることを目指している。具体的な内容は以下の通り

1. 当年枝の特徴:対象としたすべての種で、支持物獲得の性質をもつシュート(巻きつく、付着根を作る;探索枝)とそのような性質を持たないシュート(普通枝)を個体内で作り分けていた。形態的には、探索枝は全長、節間長ともに長く、個葉面積が小さい、一方普通枝は比較的短く、茎長あたり、またシュート重量あたりの葉面積(LAR)が大きいという対照的な特徴を示した。ここから、これらのつる植物では生育空間の拡大(伸長成長と支持物の確保)を探索枝が担い、光合成生産を普通枝が担うという、シュート間の機能的分化があることが示唆された。

2. 個体の成長特性とハビタットの関係:栄養成長過程にある個体の探索枝と普通枝への相対的な投資量は種によって大きく異なり、当年枝総重量に占める探索枝の割合は、1割程度から6割以上までの幅があった。探索枝への投資が大きい種は主に林縁部で、普通枝への投資が大きい種は主に林内で成長していた。この違いを、光のばらつきが大きい環境において近くの明るい場所をすばやく占める、あるいはその場での同化物生産を大きくし、光の変化が小さい林床で着実に成長する、という成長戦略の違いとして捉えた。

3. ホスト樹冠における動態:ホスト樹冠における葉の展開位置は、樹冠を覆うものから樹冠の下に止まるものまでつる植物の種によ って差があった。これを、ホストと共倒れになるリスクをおかしながらこれを次々に乗り換えて高い生産量を求めるか、生産量は低いもののリスクも小さいことを求めるかという戦略の違いとして考え、検証している。現在の所、樹冠の上に出る種の方が成長速度が大きく、同時にホストの肥大成長と生存に与える(悪)影響も大きい事を示唆する結果を得ている。

この他、最近つる植物でも年輪が読めることが判明したため、つる植物の成長速度(バイオマス増加、伸長量や高さ成長)を推定し、樹木と比較することを目指している。


○ Plant traits and their consequences in ecosystems

 黒川紘子

Plant traits, particularly their leaf traits, have various influences both on aboveground and on belowground interactions, and finally on the ecosystem processes such as carbon and nutrient cycling. In this seminar, I will have a brief introduction to my studies in tropical rain forests in Malaysia, and on the invasive plant species in New Zealand flood plain, focusing on the plant traits and their effects on plant growth, leaf herbivory, leaf litter decomposition and soil decomposer communities. In those studies, I especially focused on phenolic compounds (total phenolics, condensed tannins and lignin) as leaf traits, which are related both to herbivory and to decomposition. Main topics are 1) Allocation of net production to defense or growth in dipterocarp forest seedling in Malaysia, 2) Relationship between herbivory and decomposability in Malaysian tropical rain forests, 3) Factors relating to functional leaf traits at community-level in Malaysian tropical rain forests, 4) Relationships among leaf traits of 250 tropical tree species in Malaysia, 5) Hitting above their weight: subordinate alien species have larger impacts than dominant shrubs in floodplain primary succession in New Zealand. I will briefly talk about some on-going studies in NZ as well. Would be great if I could get some good ideas or inspirations from you all.


○ A paradox of the leaf trait convergence: a hidden coordination between leaf and root activities at a global scale

 彦坂幸毅

It is well known that leaf photosynthesis per unit dry mass (Amass) is strongly correlated with nitrogen concentration across naturally growing plants. This correlation seems reasonable from a viewpoint of biochemistry but paradoxical from a viewpoint of carbon-nitrogen balance. If other traits are identical, leaves with a higher photosynthetic rate should have a lower nitrogen concentration due to a dilution by the assimilated carbon. To find a factor to overcome the dilution effect, we analyze the photosynthesis-nitrogen relationship using simple mathematical models and literature data. We predict that plants with a higher Amass have a higher specific nitrogen absorption rate in roots (SAR). The variation in SAR is predicted to be much greater than that in Amass: given that Amass varies 130-fold, SAR may vary more than 2000-fold. We conclude that the root activity should be strongly coordinated with the leaf trait convergence at a global scale.


○ Effects of atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability on biomass production and nitrogen economy of Polygonum sachalinense plants around natural CO2 springs

 長田典之

N economy of plants is expected to change in response to elevated CO2 concentration in future ecosystems. We investigated the biomass production and N economy of a dominant plant Polygonum sachalinense around the CO2 springs. At the leaf level, we investigated the N resorption efficiency (REFF) and N resorption proficiency (RPROF). At the shoot level, N use efficiency (NUE), N productivity (NP), and the mean residence time of N (MRT) were investigated (NUE = NP * MRT; see below for the explanation of these indices). These indices of N economy were related to atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability of natural environments.
REFF and RPROF were similarly influenced by atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability. REFF increased and RPROF decreased with increasing CO2 and light. Moreover, the interaction of CO2 with soil N was detected, indicating that REFF was almost constant at high N but increased with increasing CO2 at low N, and RPROF decreased with decreasing soil N at higher CO2. NUE changed only with atmospheric CO2 concentration, and was greater at higher CO2. NP was not influenced by any environmental factors. MRT was influenced by atmospheric CO2 concentration, and was greater at higher CO2. Moreover, MRT was related not to leaf lifespan but to REFF. As a whole, P. sachalinense plants increased NUE at high CO2 environments primary by increasing REFF. Such changes in REFF in response to elevated CO2 have not been found in previous studies. We discuss the importance of changing N economy in P. sachalinense around the CO2 springs.

REFF: N resorption efficiency (proportion of N resorbed during leaf senescence)
RPROF: N resorption proficiency (N concentration of dead leaves) NUE: N use efficiency = [Biomass production (g/yr)] / [Released (=absorbed) N (g/yr)]
NP: N productivity = [Biomass production (g/yr)] / [Total N (g)] MRT: mean residence time of N = [Total N (g)] / [Released N (g/yr)]


○ Is city environment the “Experimental garden of evolution”?

 小黒芳生

Natural selection and genetic drift have been considered to cause evolution of phenotypic traits. Effective population size and gene flow into population may affect selection and genetic drift. To get better understanding of evolution, we must consider these factors. Recently, using genetic information, such as neutral marker and QTL (Qualitative Traits Loci), we are able to determine whether a phenotypic difference between populations was caused by natural selection or genetic drift. In city habitat, biotic and abiotic environmental factors differ from that in rural habitat and this may cause strong selection pressure. There are some evidences of rapid evolution in city environment. I suggest that, using genetic method in city environment, we can get better insight in evolution of phenotypic differentiation.


○ The Rubisco activation state, an ecological important parameter?

 Onno Muller

In this short review seminar I will present how Rubisco is activated, how it regulates the CO2 fixation during photosynthesis and its consequences under different environmental conditions.


○ The evolution of the defense strategies of plans: should defense compounds be produced beforehand or after herbivore to the ramet, or induced by signals from attacked ramets?

 伊藤聖

植物は食害をうける。 それに伴う負の影響を減らすために、植物は様々な抵抗戦略を採用している。

それらは、大きく分けて二種類に分類される。
・ 食害の確率を減らす。
・ 食害における被害量を減らす。
あるいは、防御物質を作らないものもある。
そして、それらの防御物質を、自身が食害をうけたことによって、他の部位、あるいは他個体に誘導するものもある。

なので、植物の防御戦略には以下の五通りが考えられる。
・ 食害の確率を減らす防御物質を持っている。
・ 食害の被害量を減らす防御物質を持っている。
・ 食害の確率を減らす防御物質を誘導する。
・ 食害の被害量を減らす防御物質を誘導する。
・ 防御物質を持たない。

また、そういった防御を誘導するシグナルは、揮発性のものと植物の体内を移動 するものがある。揮発性であれば、個体間、あるいは各部位の間で、シグナルは両方向に伝達される。体内を移動する場合、一般的に師管流にのって運ばれる。その場合、シグナルの伝達は一方向のみになる。それは、ソース・シンク関係に伴い、ふつう古い器官から新しい器官へ伝達される。

植物の多様な防御戦略に関して、本研究では以下のことを理論的に検証する。
・防御物質を持っておくこと、あるいはそれを誘導するシグナルがどのような環境(ここでは、被害をうける確率と一回あたりの被害量が変化する)で進化するか。
・ シグナルの受け渡しが、両方向か一方向かでちがいが生じるか。

⇒この結果が卒研の内容になる


○ 更新戦略を介した、種の共存メカニズム

 小島智巳

植物はどの種もほぼ同じ資源を必要としている。それにもかかわらず、ひとつの群落の中では複数の種が共存している場合が多い。餌資源の違いという、明確でわかりやすいニッチの違いがなくとも、生物種は共存可能であるということを示している。 ではいったいどのようなメカニズムがこれらの共存を促しているのか?これまで、主に熱帯での樹種の多様性を説明するために提唱されてきた仮説を、Palmer MW 1994 , Wright SJ 2002にしたがって分類すると以下のようになる。
・ 増加率が負の密度依存的である。
・ 個体密度が低いため、あるいは新規個体の加入に制限があるため、競争自体が起こらない。
・ a 環境が時間変動する(確率的に撹乱が起こる)。
b 環境が空間的に不均一である。
・ 競争排除が起こるまでに十分な時間が経っていない。
・ 種によって必要とする資源の割合が異なる。
・ 絶えず外から種の移入がある。
これらは、平衡説・・・・ ・b ・ と 非平衡説・・・・ ・a ・・に大別されることが多い。しかし、撹乱は確率的に絶えず起こるものであり、またさまざまな規模や頻度の撹乱に適応した更新戦略をもつ種が存在することから、・aはむしろ平衡説と解釈することができるのではないか。
今回は、確率的に起こる撹乱に対して、植物はどのような生活史戦略を採るのかに着目した種の共存メカニズムを紹介する。また、これが、樹木群集だけでなく、林床群集(主に草本)の種多様性の理解にも直接応用できるかどうかを考察する。


○ Population structure based on adaptive trait loci

 片渕正紀

Quaternary climate oscillations resulted in drastic environmental changes causing massive range shifts of biota. Phylogeographic studies have revealed the effect of Pleistocene climate change on population histories. However, most of the studies were based on neutral makers, which could not explain how natural selection has shaped patterns of the current population structure. Recent studies have shown that levels and patterns of nucleotide variation can provide evidence of natural selection. This method can apply not only to model organisms, but also to other organisms. I will therefore introduce several phylogeographic studies and molecular basis of adaptation in this seminar. I will then mention the evolution of general flowering, a masting phenomenon unique to Asian dipterocarp forests.


○ 都市における鳥類の種多様性を高めるための公園・緑地管理

 今井はるか

都市化が進むにつれて、もともとの自然環境は人工物によって置き換わり野生生物の 生息に適した環境は減少していきます。こうした状況の中で、自然豊かな都市を目指 すために実現可能で効率よく生物を保護することができる条件を見つけ出すことが本 研究の目的です。対象生物としては、さまざまな利点から鳥類にしました。目的関数 として鳥類の種/機能群の多様性をとり、説明関数としてサイトの孤立度/人工物の割 合/開空率/周辺の土地利用/階層構造/面積をとり、どのような説明関数が最も鳥類の 多様性に貢献するかを見出し、最終的には具体的な閾値を示すことで公園・緑地の設 定に関して応用されるようにしたいと思っています。現時点では鳥類・サイトのデー タ収集が終わったところで、データ解析に取り組んだばかりなのでセミナーではデー タを示し今後の予定を話すところまでとなります。


○ 過去の土地利用が広葉樹二次林の種組成に与える影響

 石田敏

人為撹乱下の二次林では原生林では有り得ない植生を取ることがある。 そうした人為撹乱は長期間にわたって影響を及ぼすが、植物種によって 受ける影響が異なる。本研究では過去の土地利用の影響を受ける植物が どのような生活史特性を持っているかを考えていく。

100年前の地形図から推定した過去の土地利用を「草地」と「森林」とに大別して 様々な林齢の二次林を調査した。今回の発表では調査内容と高木のみの解析 からわかる過去の土地利用による植生の違いを説明し、これからの解析の 方針などを述べる。


○ 一年草における光合成窒素利用効率の季節変化の解析

 青木信策

窒素量と光合成速度には密接な関係があるが、過去の研究例から、同一の窒素濃度でありながら、季節により異なる光合成速度を示すことが報告されており、そのことはまだ明確には解明されていない。 それに関与する理由として考えられることには、1.窒素分配 2.気孔 3.葉肉 4.比活性 の4点があげられる。 そのすべての場合を解析し、その原因を究明しようというのが実験の目的である。

中間発表の時点で、結果として出せるものはまだあまりないが、ひとつだけ分析できたことを示す。 またこれからの見通しについても発表する予定です。


○ The interaction between seeds and predators or pathogens, and the ecological significance of defensive compounds of seeds

 春増翔太

Plant seeds are considered an important resource in the field. As seeds are often attacked by frugivores or pathogens, chemical defense of seeds is an important strategy for plants. It is known that seeds containing defensive compounds relatively less reduced under higher predation risk than seeds without defenses. However, in previous studies, the interaction between seeds and predator has been investigated without considering the effects of defensive compounds. In the next seminar, I will introduce several studies about the interaction between seeds and predations or pathogens considering defensive compounds, and ecological significance of defensive compounds, which should be considered hereafter.


○ The effect of elevated CO2 concentrations on leaf senescence
大気CO2濃度の上昇が葉の老化に与える影響

 秋田理紗子

葉が老化するとクロロフィルが減少して光合成能力が低下し、最終的には死んでしまいます。しかし、葉の老化はただ悪くなるだけの現象ではなく、栄養分の回収を行うことによって植物全体の光合成をより効率的に行うことなどにも関わっています。逆に、農業的には作物の生産を制限してしまうかもしれません。現在、地球の大気CO2濃度は上昇を続けており、今世紀末には今の2倍の濃度になると考えられています。従って、高CO2下で葉の老化がどのように変化するかを調べることは、高CO2環境下での植物の発生過程を理解するためだけでなく、葉の老化を操作する方法を探るためにも重要かもしれません。このセミナーでは、初めに葉の老化について概説し、その後、高CO2環境下での葉の老化について調べた研究をいくつか紹介する予定です。


○ 葉の寿命と光合成の標高による違い
The difference of leaf longevity and photosynthesis among different altitudes

 神山千穂

環境が異なるとそこに生育する植物やその葉の特性は異なる。葉は光合成を行う器官であり、葉寿命は光合成生産を介して植物の環境への適応度に関わる。異なる環境において、植物が炭素獲得を最適にするような戦略を一般化したとき、葉寿命はその重要な要因となる。本レビューでは、葉寿命と光合成の関係について説明し、次に異なる環境として標高に着目し、異なる標高間では葉寿命と光合成がどのように異なるのかを紹介する。一般的に高標高では、低温や積雪など植物にとっての環境ストレスが強く、光合成に適した好適期間は短くなる。同種で比較した場合に、常緑種では、高標高になるほど葉寿命が長くなる傾向にあり、落葉種の葉寿命は、標高が高くなることによる好適期間の短縮に影響を受けているようだ。さらに、葉寿命と光合成生産の観点から、標高に伴う植物の生活史戦略の変化についても紹介する。葉の炭素獲得を光合成速度の瞬間値から葉寿命を考慮した積算値として求めることで、標高間に観察される常緑/落葉、木本/草本などの分布の違いが説明されるかもしれない。


○ 高い山では植物はどのように小さくなってきたのか?

 永野聡一郎

山を登ってゆくと標高が増すにつれて植生の高さが低くなっていく現象が見られる。どのような要因が、山に生育する植物の小型化をもたらしてきたのだろうか。本レビューでは、主に植物に作用し表現型の可塑性をもたらす環境要因と内部要因について示し、植物が高山で小型化してきた現象について、以下の視点から解釈を試みる。
@環境要因による致死的ストレス;標高が増すにつれて、植物を取り巻く環境条件は、徐々に厳しくなる。森林限界を超えると、森林の構成種は厳しい環境ストレスに伴い、生育が困難になる。積雪は、物理的圧力や生育期間を短縮させるストレス要因として働くが、一方で、積雪による保温・保湿や物理的傷害からの保護効果は植物の生存に欠かせない要因であり、積雪深は植物の生育型に大きな影響を与えている。A物質生産;低い気温と長い積雪期間などによる生育可能期間の短縮は、生産可能量をある程度規定している。しかし、高山で生育する植物は、物質生産をなるべく高めるような適応戦略を供えている。B物質分配;高山の貧栄養で水分利用性の低い土壌では、根からの水や栄養塩の吸収を補うため、地上部よりも地下部への資源投資を優先させている可能性がある。また、栄養生長以外にも繁殖への投資は植物高を減少させる要因となりうる。C代謝調節;光合成産物から独立して、糖とアミノ酸合成に至る経路が、生長と組織の更新に必要な最低限の割合から不調和に陥ることがある。


○ 草本群落内での植物の形態と光獲得の関係

 行方健二

植物の形体が、光の獲得に影響を与えることが知られているが、 草本群落内での植物の形体の意味については、まだ解らない部分が ある。y-plantモデルを使って群落内での光獲得に対する形体の 意味を調べる。


○ Effects of seed limitation on spatial structures of plant communities

 饗庭正寛

種子制限の群集/個体群構造に対する影響に関しての 理論研究、記載的研究、実験的研究のそれぞれの 最近の成果について紹介するとともに その問題点についても取り上げます。 また、それらの問題点の解決を狙って 苫小牧で行っている実験についても 簡単にご紹介します。


○ Intraspecific latitudinal variation in photosynthetic capacity and leaf nitrogen content of the evergreen understory shrub Aucuba japonica.

 Onno Muller

Photosynthesis directly responds to changes in light and temperature climate and can acclimate to respective climates for an optimal performance.
Nitrogen is abundant in photosynthetic enzymes and often limiting for plant growth. Therefore photosynthesis is strongly related to the leaf nitrogen content. Optimal nitrogen distributions in leaves predict a high leaf nitrogen content at high light and low temperature conditions.

In the south of Japan it is warmer than in the north and evergreen and deciduous forests are dominant in south and north Japan, respectively. In the understory the light climate is dependent on the leaf canopy above it: a deciduous canopy opens in winter whereas under an evergreen canopy it is all the year dark. So when the common understory shrub Aucuba japonica does not have strong habitat nice specialization it is on average over the year exposed to lower light conditions and higher temperature in the south than in the north of Japan.

For this seminar I question whether Aucuba japonica acclimates to these different growth conditions and what are the differences in acclimation between south and north ecotypes?


○Study on the trade-off relations between defensive compounds of seeds and mortality in seeds and seedlings

 春増翔太

森林における多樹種共存機構解明のため今年度行ってきた研究と今後の予定につ いて発表致します。種子中の防御物質に対する投資は種子の死亡率とトレードオ フの関係にあるという仮説の基、カエデ科樹種6種の化学成分分析及び実験を 行った。具体的には
 ・種子中のフェノール類には哺乳類による捕食を回避する効果がある
 ・種子中のフェノール類には菌類による死亡を回避する効果がある
 ・フェノール類の濃度は樹種の地形分布と関係し、菌による死亡が期待される 谷部に分布する樹種ほど菌害を避ける効果が強い
という3つの仮説の検証を分析したデータや実験に基づいて検証する。


○イチジク-イチジクコバチの絶対送粉共生を安定させる要因
  -コバチの近交弱勢の影響の検証-

 片渕正紀

イチジクーイチジクコバチの絶対送粉共生を成り立たせる上で、一つの花序内の創設雌の数は重要である。 種子生産とコバチの孵化が別々の花序で行われる雌雄異株イチジクでは、花序内の創設雌が増えると、イチジクの種子生産が増加することが前年までの調査で示された。
またその他の先行研究では、産卵場所の競争などにより創設雌あたりの産卵数が減少することが明らかになっている。 このように、一つの花序内に複数の創設雌が入ることがイチジクには有利、コバチには不利に思える。
そこで、「複数の創設雌が産卵することにより、花序内の次世代のコバチが近親交配を回避できることが、コバチにとって有利である」という仮説のもと、現在行っている実験を紹介する。


○ What Limits Seedling Recruitment in Plant Populations? A Closer Look at Seed Limitation and Establishment Limitation

 Regielene Gonzales

The life cycle of seed plants comprises two ecologically distinct phases, a sessile phase and a dispersal phase. Recruitment of individuals to plant populations represents the interface between these phases. Plant recruitment in the early stages of the plant life cycle is primarily determined by two constraints: the availability of environmentally suitable sites, and the likelihood of seeds reaching those sites. These two limitations to pla nt recruitment are referred to as establishment limitation and seed limitation, respectively. Seed limited populations have fewer individuals than possible because seeds fail to arrive at saturating densities at all potential recruitment sites. On the other hand, establishment limited populations have sizes that are constrained by the number and quality of available sites for establishment, not by the number of seeds. These two limitations r epresent two ends of a continuum, but are not mutually exclusive.
Distinguishing the roles of seed limitation and establishment limitation in controlling plant species distributions is important for understanding community structure, invasion, and restoration. In this seminar, I will present evidences of the occurrence of these limitations in nature and show scientific studies that distinguish these limitations in plant populations.


○ サワギキョウにおける花序内花間性投資パターン:花序サイズによる違い

 板垣智之

いくつの植物で花序(花茎上の花の集まり)内の花間で雄・雌繁殖器官への投 資量に違いがあることがわかってきた。このような違いは、花ごとの送受粉環 境や資源の得やすさが、花序内で異なることに対する適応と説明されている。 本研究では、花序の大きさが花間の性投資量の違いに与える影響を調べた。花 序の大きさは個体の資源量と関係し、さらに訪花昆虫の誘引・隣花受粉に影響 すると考えられる。サワギキョウを材料に、異なる大きさの花序ごとに、花あ たり花粉・胚珠・種子数を花間で比較した。その結果、大きな花序ほど、開花 の遅い花における胚珠・種子数が減少していることがわかった。これらの結果 から、サワギキョウでは、雌器官への投資については花序の大きさに依存した 性投資パターンがあることがわかった。


○成長と生存のトレードオフは、多種の共存を可能にするか?

 小嶋智巳

 更新戦略を介した植物の共存メカニズムについてシミュレーションモデルを 作り、解析しています。その途中経過を発表します。
 生存率と成長速度がトレードオフ関係にあれば、多種が共存可能であると言 われています。実際に熱帯林や温帯林における研究では、共存する種間で、生 存率と成長速度が負の関係にあることが報告されています。この実際に観測さ れたトレードオフ関係をモデル組み込みました。
 シミュレーションの結果、生涯にわたって一定の環境下で一定の成長速度・ 生存率で成長すると仮定した場合には、共存が困難でした。しかし、小さな個 体は成木によって被陰され、その成木が死亡するとギャップができる、という 環境変化を取り入れたところ、複数種が共存可能な状況が生まれました。この 共存には、被陰下での生存率と、ギャップでの成長速度のトレードオフが重要 であるということが示唆されています。この結果について、未だ納得のいく解 釈が出来ていません。
 さらにモデルを改良し、繁殖開始サイズ(成熟サイズ)も一つの戦略として進 化可能なパラメータとすれば、より多様なシミュレーションを行うことが出来ます。
 今回は、それらを用いるうえで起こりうる問題点や、予測可能なことについてを紹介します。


○異なる標高の湿原植物群集における空間構造と光獲得競争の季節変化
The seasonal change of canopy structure and light competition in wetland plant communities at different altitudes

 神山千穂

近年の地球温暖化に伴い、植物群集内の気候変動が種間相互作用に影響し、さらには種組成を変化させることが懸念されている。群集の環境応答の理解と予測には、そのプロセスとなる種間相互作用の解明が必要である。本研究は、最も重要な種間相互作用の一つとして、光をめぐる資源獲得競争に着目した。温暖化の影響に敏感な生態系の一つと考えられる高標高に成立する湿原植物群集(青森県八甲田山)を対象とし、標高傾度(590, 1030, 1290m)を利用して異なる温度環境にある群集間の比較を行った。一昨 年度、地上部現存量が最大になる8月に層別刈取を行い、競争力の指標として地上部重量あたりの光獲得量(瞬間光獲得効率)が、落葉種に比べて常緑種で低いなど、標高に関わらず機能型(functional type)によって異なることが 明らかになった。
今回のセミナーでは、一年を通じた競争関係を明らかにすることを目的とし、各種の葉のフェノロジー追跡を行って群集の空間構造を推定し、各種の一年間の光獲得効率(年光獲得効率)を計算した結果について紹介する。 各種はそれぞれ異なるフェノロジーを有し、一年を通して経験する光環境は異なった。年光獲得効率は種間、機能型間で大きく異ならなかった。8月に瞬間光獲得効率が低かった種は、雪解け直後の春に展開していた葉が、群落上層に他種の葉が展開する前に強い光を受けていたことで、他種と同等の年光獲得効率を実現していた。このことは、葉のフェノロジーが光獲得競争に大きな役割をもつことを示している。また、温暖化に伴う融雪期間の延長によって、競争関係が変化する可能性を示唆している。


○The Evolutionary Enigma of Sexual Reproduction

University of British Columbia  Sarah P. Otto

Sex and recombination are widespread, but explaining th ese phen most difficult problems in evolutionary biology. Recombination is advantageous when different individuals in a population carry different advantageous alleles. By bringing together advantageous alleles onto the same chromosome, recombination speeds up the process of adaptation and opposes the fixation of harmful mutations by means of Muller's ratchet. Nevertheless, adaptive substitutions favour sex and recombination only if the rate of adaptive mutation is high, and Muller's ratchet operates only in small or asexual populations. Here, by tracking the fate of modifier alleles that alter the frequency of sex and recombination, we show that background selection against deleterious mutant alleles provides a stochastic advantage to sex and recombination that increases with population size. The advantage arises because, with low levels of recombination, selection at other loci severely reduces the effective population size and genetic variance in fitness at a focal locus (the Hill -Roberts lation less able to respond to selection and to rid itself of deleterious mutations. Sex and recombination reveal the hidden genetic variance in fitness by combining chromosomes of intermediate fitness to create chromosomes that are relatively free of (or are loaded with) deleterious mutations. This increase in genetic variance within finite populations improves the response to selection and generates a substantial advantage to sex and recombination that is fairly insensitive to the form of epistatic interactions between deleterious alleles. The mechanism supported by our results offers a robust and broadly applicable explanation for the evolutionary advantage of recombination and can explain the spread of costly sex.


○異なる風衝ストレス下にある常緑針葉樹ハイマツの葉特性

 永野聡一郎

どのような場所でも、植物は生長や生存を制限する各種のストレスにさらされている。一般的には、貧栄養、乾燥や強光などストレスが強くはたらく場所に生育する植物ほど、厚く丈夫な葉を備えている。
ハイマツ(Pinus pumila)は、日本の山岳地における優占種のひとつである。本種は生育する微地形によって生育型を変化させている。例えば、植物高は風衝地よりも風背地において高い。また風衝地では、ハイマツの針葉が褐変化し、針葉に多くのストレスがかかっているように見える。冬季の風衝作用は、葉に物理的なダメージを与えると考えられる。本研究では、風衝地のハイマツが厚く丈夫な葉を持つのではないかとの仮説を立て、風衝作用の異なる立地に生育するハイマツの針葉の葉特性を調べた。
その結果、予想とは逆に、葉面積あたりの葉重(LMA)は、風衝地よりも風背地のほうが高く、風衝地のハイマツは厚い葉を備えてはいなかった。針葉の総断面積と表皮組織の面積は比例の関係にあり、広い面積の葉ほど厚い表皮を備えていた。当年葉の葉面積あたりの最大光合成速度(Amax)は、生育する微地形に関わらずほぼ等しかったが、一年葉では風衝地で越冬したハイマツが風背地のものに比べて低下していた。また、葉面積あたりの窒素含量(Narea)は、風衝地よりも風背地で生育するもののほうが高く、LMAに応じて高くなる傾向があった。さらに、NareaとAmaxの間には総じて緩やかな正の相関が見られた。風衝地のハイマツの葉寿命は、風背地のそれよりも短く、風衝地のハイマツは、丈夫で長寿命の葉よりもコストの安い短寿命の葉を作っていると考えられた。


○都市化の植物への影響

 小黒芳生

これまでの研究で、進化はあっという間に起こり、その速さは最初の 方ほど速いことがわかってきました。選択の働き方を知るには、進化の 最初の方を調べなくてはいけないと考えました。都市は比較的新しい環境 です。もし都市環境が、植物にこれまでと違った選択となるなら、都市 を用いて現在進行形の進化を調べられるのではないかと考えました。 セミナーではこれまでにやったことと、これからやろうと思っていることに ついて話します。


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2007講座セミナ要旨

 植物生態学講座・2007年度講座セミナー要旨 (08.2.28更新)


○ 形態的多様性に基づく熱帯樹木の共存機構の解明

 饗庭正寛

ボルネオ熱帯雨林の樹木を対象に、 (i)非パイオニア樹木種の稚樹の形態には物質分配の変異と 樹冠構造の変異という2つの独立した対立軸が存在すること、 (ii)物質分配の変異は生存率と成長速度の間のトレードオフを 介して空間的な光環境の異質性に依存した多種共存を可能にすること、 (iii)一方、樹冠構造のトレードオフは、時間的な光環境の異質性に 依存した多種共存を可能にする可能性があること、 などを紹介する。


○ ハイマツの生育型に対する環境ストレスの影響

 永野聡一郎

冬季の積雪は、植物の分布を決定する重要な環境要因である。日本で森林限界以上の地域は、一般にハイマツ(Pinus pumila Regel)群落が優占している。森林限界以上でハイマツの生育 型に注目すると、尾根筋や山頂など風が強く吹きつけ、冬季に雪が積もらない風衝地では、ハイマツの樹高は低く(20〜40cm)、幹は細く、枯れている枝が多いが、風が緩やかで冬に雪が深く積もる風背地では、樹高が高く(80〜120cm)、幹は太い。このように積雪深とハイマツの生育型は密接に関係していると考えられてきた。本研究は、冬季の積雪をはじめとする環境ストレスに対する樹木の応答について、特に生育立地に着目し、生育型の異なるハイマツが成立する機構を明らかにすることを目的とした。

生育型に差異をもたらす環境要因の作用機構を明らかにするため、二つの仮説による検証を試みた。第一に、積雪上のシュートが枯死するため風衝地のハイマツが生育型を低く留めるとする仮説について、冬季の環境ストレスを検証した。第二に、伸長・肥大生長のもとになる生育期間中の物質生産が風衝地では少なく、ハイマツは風背地のように大きく成長できないとの仮説を、シュートの現存量と光合成の測定によって検証した。

土壌が凍結し吸水が行えない冬季、風衝地において積雪から出たハイマツのシュートは、針葉表面のクチクラ層が飛散する氷雪や砂礫によって磨耗し、春先に乾燥を回避できず、早期に枯死する傾向があった。風衝地における木部の水分通導阻害は、針葉の乾燥を助長した。このため、ある立地で生存可能なハイマツの群落高は、その場所の積雪深以下で保護される高さに留められると示唆された。また、夏季の光合成を野外で測定した結果、風衝地の光合成速度が低下しており、冬季に受けた針葉の損傷による酵素活性の低下が原因であることが明らかとなった。シュート単位の非同化器官と同化器官の割合(C/F)は風衝地のハイマツにおいて低く、風衝地のハイマツは幹や枝への投資が制限されていた。以上のことから、風衝地のハイマツを矮性化させる要因は、冬季の環境ストレスとそれに続く物質収支の不均衡であり、積雪は日本の森林限界以上でのハイマツの生存および優占に不可欠な環境要因であると考えられる。


○ コンポストを用いた持続可能的な農村モデルに関する考察

 春増翔太

東北大学農学部付属農場(複合フィールド研究センター)をひとつの農村モデル と見立て、各種圃場をそれぞれ個別の農家と置き換えて農業、林業、畜産業等の 各産業間における資源循環モデルを構築し、持続可能性を探る。 資源としてコンポストに焦点を当ててみると、時期的・技術的な問題点により持 続可能的な資源循環モデルとして有効なものを構築することは困難であった。
○日本における森林の有用性の考察 -既存研究のサーベイを用いて- 日本における森林の利用法や有用資源に関する既存研究に関するサーベイ・リ サーチ。


○ つる植物の種による生活史の多様性

 東京大学日光植物園(D4) 市橋隆自

木本性つる植物(liana)は森林(特に熱帯林)の重要な構成要素であり、森林の生産、物質循環、更新等に大きな役割を果たしている。しかしながら近年、熱帯林の研究が進むまでは生態系の中のマイナーな存在として、ほとんど生態学的研究の対象とされて来なかった。最近ではコミュニティーレベルの知見は増えてきたものの、種や個体のレベルでの詳細な生態研究(成長や生活史、生理生態、多様性など)は驚くほど少なく、未だその生態には不明な点が多い。
私は(基本的に)日光の調査地で最も多く見られる木本性つる植物5種(サルナシ、ツルウメモドキ、マツブサ、ミツバアケビ、イワガラミ)を対象に、つる植物の生活史における多様性を明らかにすることを目的として研究を続けてきた。さらにはその多様性を踏まえた上で、自立した樹木に対して「つる植物」という戦略はどのようなものなのか、その利点と制約を明らかにすることを目指している。具体的な内容は以下の通り

1. 当年枝の特徴:対象としたすべての種で、支持物獲得の性質をもつシュート(巻きつく、付着根を作る;探索枝)とそのような性質を持たないシュート(普通枝)を個体内で作り分けていた。形態的には、探索枝は全長、節間長ともに長く、個葉面積が小さい、一方普通枝は比較的短く、茎長あたり、またシュート重量あたりの葉面積(LAR)が大きいという対照的な特徴を示した。ここから、これらのつる植物では生育空間の拡大(伸長成長と支持物の確保)を探索枝が担い、光合成生産を普通枝が担うという、シュート間の機能的分化があることが示唆された。

2. 個体の成長特性とハビタットの関係:栄養成長過程にある個体の探索枝と普通枝への相対的な投資量は種によって大きく異なり、当年枝総重量に占める探索枝の割合は、1割程度から6割以上までの幅があった。探索枝への投資が大きい種は主に林縁部で、普通枝への投資が大きい種は主に林内で成長していた。この違いを、光のばらつきが大きい環境において近くの明るい場所をすばやく占める、あるいはその場での同化物生産を大きくし、光の変化が小さい林床で着実に成長する、という成長戦略の違いとして捉えた。

3. ホスト樹冠における動態:ホスト樹冠における葉の展開位置は、樹冠を覆うものから樹冠の下に止まるものまでつる植物の種によ って差があった。これを、ホストと共倒れになるリスクをおかしながらこれを次々に乗り換えて高い生産量を求めるか、生産量は低いもののリスクも小さいことを求めるかという戦略の違いとして考え、検証している。現在の所、樹冠の上に出る種の方が成長速度が大きく、同時にホストの肥大成長と生存に与える(悪)影響も大きい事を示唆する結果を得ている。

この他、最近つる植物でも年輪が読めることが判明したため、つる植物の成長速度(バイオマス増加、伸長量や高さ成長)を推定し、樹木と比較することを目指している。


○ Plant traits and their consequences in ecosystems

 黒川紘子

Plant traits, particularly their leaf traits, have various influences both on aboveground and on belowground interactions, and finally on the ecosystem processes such as carbon and nutrient cycling. In this seminar, I will have a brief introduction to my studies in tropical rain forests in Malaysia, and on the invasive plant species in New Zealand flood plain, focusing on the plant traits and their effects on plant growth, leaf herbivory, leaf litter decomposition and soil decomposer communities. In those studies, I especially focused on phenolic compounds (total phenolics, condensed tannins and lignin) as leaf traits, which are related both to herbivory and to decomposition. Main topics are 1) Allocation of net production to defense or growth in dipterocarp forest seedling in Malaysia, 2) Relationship between herbivory and decomposability in Malaysian tropical rain forests, 3) Factors relating to functional leaf traits at community-level in Malaysian tropical rain forests, 4) Relationships among leaf traits of 250 tropical tree species in Malaysia, 5) Hitting above their weight: subordinate alien species have larger impacts than dominant shrubs in floodplain primary succession in New Zealand. I will briefly talk about some on-going studies in NZ as well. Would be great if I could get some good ideas or inspirations from you all.


○ A paradox of the leaf trait convergence: a hidden coordination between leaf and root activities at a global scale

 彦坂幸毅

It is well known that leaf photosynthesis per unit dry mass (Amass) is strongly correlated with nitrogen concentration across naturally growing plants. This correlation seems reasonable from a viewpoint of biochemistry but paradoxical from a viewpoint of carbon-nitrogen balance. If other traits are identical, leaves with a higher photosynthetic rate should have a lower nitrogen concentration due to a dilution by the assimilated carbon. To find a factor to overcome the dilution effect, we analyze the photosynthesis-nitrogen relationship using simple mathematical models and literature data. We predict that plants with a higher Amass have a higher specific nitrogen absorption rate in roots (SAR). The variation in SAR is predicted to be much greater than that in Amass: given that Amass varies 130-fold, SAR may vary more than 2000-fold. We conclude that the root activity should be strongly coordinated with the leaf trait convergence at a global scale.


○ Effects of atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability on biomass production and nitrogen economy of Polygonum sachalinense plants around natural CO2 springs

 長田典之

N economy of plants is expected to change in response to elevated CO2 concentration in future ecosystems. We investigated the biomass production and N economy of a dominant plant Polygonum sachalinense around the CO2 springs. At the leaf level, we investigated the N resorption efficiency (REFF) and N resorption proficiency (RPROF). At the shoot level, N use efficiency (NUE), N productivity (NP), and the mean residence time of N (MRT) were investigated (NUE = NP * MRT; see below for the explanation of these indices). These indices of N economy were related to atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability of natural environments.
REFF and RPROF were similarly influenced by atmospheric CO2 concentration, irradiance, and soil N availability. REFF increased and RPROF decreased with increasing CO2 and light. Moreover, the interaction of CO2 with soil N was detected, indicating that REFF was almost constant at high N but increased with increasing CO2 at low N, and RPROF decreased with decreasing soil N at higher CO2. NUE changed only with atmospheric CO2 concentration, and was greater at higher CO2. NP was not influenced by any environmental factors. MRT was influenced by atmospheric CO2 concentration, and was greater at higher CO2. Moreover, MRT was related not to leaf lifespan but to REFF. As a whole, P. sachalinense plants increased NUE at high CO2 environments primary by increasing REFF. Such changes in REFF in response to elevated CO2 have not been found in previous studies. We discuss the importance of changing N economy in P. sachalinense around the CO2 springs.

REFF: N resorption efficiency (proportion of N resorbed during leaf senescence)
RPROF: N resorption proficiency (N concentration of dead leaves) NUE: N use efficiency = [Biomass production (g/yr)] / [Released (=absorbed) N (g/yr)]
NP: N productivity = [Biomass production (g/yr)] / [Total N (g)] MRT: mean residence time of N = [Total N (g)] / [Released N (g/yr)]


○ Is city environment the “Experimental garden of evolution”?

 小黒芳生

Natural selection and genetic drift have been considered to cause evolution of phenotypic traits. Effective population size and gene flow into population may affect selection and genetic drift. To get better understanding of evolution, we must consider these factors. Recently, using genetic information, such as neutral marker and QTL (Qualitative Traits Loci), we are able to determine whether a phenotypic difference between populations was caused by natural selection or genetic drift. In city habitat, biotic and abiotic environmental factors differ from that in rural habitat and this may cause strong selection pressure. There are some evidences of rapid evolution in city environment. I suggest that, using genetic method in city environment, we can get better insight in evolution of phenotypic differentiation.


○ The Rubisco activation state, an ecological important parameter?

 Onno Muller

In this short review seminar I will present how Rubisco is activated, how it regulates the CO2 fixation during photosynthesis and its consequences under different environmental conditions.


○ The evolution of the defense strategies of plans: should defense compounds be produced beforehand or after herbivore to the ramet, or induced by signals from attacked ramets?

 伊藤聖

植物は食害をうける。 それに伴う負の影響を減らすために、植物は様々な抵抗戦略を採用している。

それらは、大きく分けて二種類に分類される。
・ 食害の確率を減らす。
・ 食害における被害量を減らす。
あるいは、防御物質を作らないものもある。
そして、それらの防御物質を、自身が食害をうけたことによって、他の部位、あるいは他個体に誘導するものもある。

なので、植物の防御戦略には以下の五通りが考えられる。
・ 食害の確率を減らす防御物質を持っている。
・ 食害の被害量を減らす防御物質を持っている。
・ 食害の確率を減らす防御物質を誘導する。
・ 食害の被害量を減らす防御物質を誘導する。
・ 防御物質を持たない。

また、そういった防御を誘導するシグナルは、揮発性のものと植物の体内を移動 するものがある。揮発性であれば、個体間、あるいは各部位の間で、シグナルは両方向に伝達される。体内を移動する場合、一般的に師管流にのって運ばれる。その場合、シグナルの伝達は一方向のみになる。それは、ソース・シンク関係に伴い、ふつう古い器官から新しい器官へ伝達される。

植物の多様な防御戦略に関して、本研究では以下のことを理論的に検証する。
・防御物質を持っておくこと、あるいはそれを誘導するシグナルがどのような環境(ここでは、被害をうける確率と一回あたりの被害量が変化する)で進化するか。
・ シグナルの受け渡しが、両方向か一方向かでちがいが生じるか。

⇒この結果が卒研の内容になる


○ 更新戦略を介した、種の共存メカニズム

 小島智巳

植物はどの種もほぼ同じ資源を必要としている。それにもかかわらず、ひとつの群落の中では複数の種が共存している場合が多い。餌資源の違いという、明確でわかりやすいニッチの違いがなくとも、生物種は共存可能であるということを示している。 ではいったいどのようなメカニズムがこれらの共存を促しているのか?これまで、主に熱帯での樹種の多様性を説明するために提唱されてきた仮説を、Palmer MW 1994 , Wright SJ 2002にしたがって分類すると以下のようになる。
・ 増加率が負の密度依存的である。
・ 個体密度が低いため、あるいは新規個体の加入に制限があるため、競争自体が起こらない。
・ a 環境が時間変動する(確率的に撹乱が起こる)。
b 環境が空間的に不均一である。
・ 競争排除が起こるまでに十分な時間が経っていない。
・ 種によって必要とする資源の割合が異なる。
・ 絶えず外から種の移入がある。
これらは、平衡説・・・・ ・b ・ と 非平衡説・・・・ ・a ・・に大別されることが多い。しかし、撹乱は確率的に絶えず起こるものであり、またさまざまな規模や頻度の撹乱に適応した更新戦略をもつ種が存在することから、・aはむしろ平衡説と解釈することができるのではないか。
今回は、確率的に起こる撹乱に対して、植物はどのような生活史戦略を採るのかに着目した種の共存メカニズムを紹介する。また、これが、樹木群集だけでなく、林床群集(主に草本)の種多様性の理解にも直接応用できるかどうかを考察する。


○ Population structure based on adaptive trait loci

 片渕正紀

Quaternary climate oscillations resulted in drastic environmental changes causing massive range shifts of biota. Phylogeographic studies have revealed the effect of Pleistocene climate change on population histories. However, most of the studies were based on neutral makers, which could not explain how natural selection has shaped patterns of the current population structure. Recent studies have shown that levels and patterns of nucleotide variation can provide evidence of natural selection. This method can apply not only to model organisms, but also to other organisms. I will therefore introduce several phylogeographic studies and molecular basis of adaptation in this seminar. I will then mention the evolution of general flowering, a masting phenomenon unique to Asian dipterocarp forests.


○ 都市における鳥類の種多様性を高めるための公園・緑地管理

 今井はるか

都市化が進むにつれて、もともとの自然環境は人工物によって置き換わり野生生物の 生息に適した環境は減少していきます。こうした状況の中で、自然豊かな都市を目指 すために実現可能で効率よく生物を保護することができる条件を見つけ出すことが本 研究の目的です。対象生物としては、さまざまな利点から鳥類にしました。目的関数 として鳥類の種/機能群の多様性をとり、説明関数としてサイトの孤立度/人工物の割 合/開空率/周辺の土地利用/階層構造/面積をとり、どのような説明関数が最も鳥類の 多様性に貢献するかを見出し、最終的には具体的な閾値を示すことで公園・緑地の設 定に関して応用されるようにしたいと思っています。現時点では鳥類・サイトのデー タ収集が終わったところで、データ解析に取り組んだばかりなのでセミナーではデー タを示し今後の予定を話すところまでとなります。


○ 過去の土地利用が広葉樹二次林の種組成に与える影響

 石田敏

人為撹乱下の二次林では原生林では有り得ない植生を取ることがある。 そうした人為撹乱は長期間にわたって影響を及ぼすが、植物種によって 受ける影響が異なる。本研究では過去の土地利用の影響を受ける植物が どのような生活史特性を持っているかを考えていく。

100年前の地形図から推定した過去の土地利用を「草地」と「森林」とに大別して 様々な林齢の二次林を調査した。今回の発表では調査内容と高木のみの解析 からわかる過去の土地利用による植生の違いを説明し、これからの解析の 方針などを述べる。


○ 一年草における光合成窒素利用効率の季節変化の解析

 青木信策

窒素量と光合成速度には密接な関係があるが、過去の研究例から、同一の窒素濃度でありながら、季節により異なる光合成速度を示すことが報告されており、そのことはまだ明確には解明されていない。 それに関与する理由として考えられることには、1.窒素分配 2.気孔 3.葉肉 4.比活性 の4点があげられる。 そのすべての場合を解析し、その原因を究明しようというのが実験の目的である。

中間発表の時点で、結果として出せるものはまだあまりないが、ひとつだけ分析できたことを示す。 またこれからの見通しについても発表する予定です。


○ The interaction between seeds and predators or pathogens, and the ecological significance of defensive compounds of seeds

 春増翔太

Plant seeds are considered an important resource in the field. As seeds are often attacked by frugivores or pathogens, chemical defense of seeds is an important strategy for plants. It is known that seeds containing defensive compounds relatively less reduced under higher predation risk than seeds without defenses. However, in previous studies, the interaction between seeds and predator has been investigated without considering the effects of defensive compounds. In the next seminar, I will introduce several studies about the interaction between seeds and predations or pathogens considering defensive compounds, and ecological significance of defensive compounds, which should be considered hereafter.


○ The effect of elevated CO2 concentrations on leaf senescence
大気CO2濃度の上昇が葉の老化に与える影響

 秋田理紗子

葉が老化するとクロロフィルが減少して光合成能力が低下し、最終的には死んでしまいます。しかし、葉の老化はただ悪くなるだけの現象ではなく、栄養分の回収を行うことによって植物全体の光合成をより効率的に行うことなどにも関わっています。逆に、農業的には作物の生産を制限してしまうかもしれません。現在、地球の大気CO2濃度は上昇を続けており、今世紀末には今の2倍の濃度になると考えられています。従って、高CO2下で葉の老化がどのように変化するかを調べることは、高CO2環境下での植物の発生過程を理解するためだけでなく、葉の老化を操作する方法を探るためにも重要かもしれません。このセミナーでは、初めに葉の老化について概説し、その後、高CO2環境下での葉の老化について調べた研究をいくつか紹介する予定です。


○ 葉の寿命と光合成の標高による違い
The difference of leaf longevity and photosynthesis among different altitudes

 神山千穂

環境が異なるとそこに生育する植物やその葉の特性は異なる。葉は光合成を行う器官であり、葉寿命は光合成生産を介して植物の環境への適応度に関わる。異なる環境において、植物が炭素獲得を最適にするような戦略を一般化したとき、葉寿命はその重要な要因となる。本レビューでは、葉寿命と光合成の関係について説明し、次に異なる環境として標高に着目し、異なる標高間では葉寿命と光合成がどのように異なるのかを紹介する。一般的に高標高では、低温や積雪など植物にとっての環境ストレスが強く、光合成に適した好適期間は短くなる。同種で比較した場合に、常緑種では、高標高になるほど葉寿命が長くなる傾向にあり、落葉種の葉寿命は、標高が高くなることによる好適期間の短縮に影響を受けているようだ。さらに、葉寿命と光合成生産の観点から、標高に伴う植物の生活史戦略の変化についても紹介する。葉の炭素獲得を光合成速度の瞬間値から葉寿命を考慮した積算値として求めることで、標高間に観察される常緑/落葉、木本/草本などの分布の違いが説明されるかもしれない。


○ 高い山では植物はどのように小さくなってきたのか?

 永野聡一郎

山を登ってゆくと標高が増すにつれて植生の高さが低くなっていく現象が見られる。どのような要因が、山に生育する植物の小型化をもたらしてきたのだろうか。本レビューでは、主に植物に作用し表現型の可塑性をもたらす環境要因と内部要因について示し、植物が高山で小型化してきた現象について、以下の視点から解釈を試みる。
@環境要因による致死的ストレス;標高が増すにつれて、植物を取り巻く環境条件は、徐々に厳しくなる。森林限界を超えると、森林の構成種は厳しい環境ストレスに伴い、生育が困難になる。積雪は、物理的圧力や生育期間を短縮させるストレス要因として働くが、一方で、積雪による保温・保湿や物理的傷害からの保護効果は植物の生存に欠かせない要因であり、積雪深は植物の生育型に大きな影響を与えている。A物質生産;低い気温と長い積雪期間などによる生育可能期間の短縮は、生産可能量をある程度規定している。しかし、高山で生育する植物は、物質生産をなるべく高めるような適応戦略を供えている。B物質分配;高山の貧栄養で水分利用性の低い土壌では、根からの水や栄養塩の吸収を補うため、地上部よりも地下部への資源投資を優先させている可能性がある。また、栄養生長以外にも繁殖への投資は植物高を減少させる要因となりうる。C代謝調節;光合成産物から独立して、糖とアミノ酸合成に至る経路が、生長と組織の更新に必要な最低限の割合から不調和に陥ることがある。


○ 草本群落内での植物の形態と光獲得の関係

 行方健二

植物の形体が、光の獲得に影響を与えることが知られているが、 草本群落内での植物の形体の意味については、まだ解らない部分が ある。y-plantモデルを使って群落内での光獲得に対する形体の 意味を調べる。


○ Effects of seed limitation on spatial structures of plant communities

 饗庭正寛

種子制限の群集/個体群構造に対する影響に関しての 理論研究、記載的研究、実験的研究のそれぞれの 最近の成果について紹介するとともに その問題点についても取り上げます。 また、それらの問題点の解決を狙って 苫小牧で行っている実験についても 簡単にご紹介します。


○ Intraspecific latitudinal variation in photosynthetic capacity and leaf nitrogen content of the evergreen understory shrub Aucuba japonica.

 Onno Muller

Photosynthesis directly responds to changes in light and temperature climate and can acclimate to respective climates for an optimal performance.
Nitrogen is abundant in photosynthetic enzymes and often limiting for plant growth. Therefore photosynthesis is strongly related to the leaf nitrogen content. Optimal nitrogen distributions in leaves predict a high leaf nitrogen content at high light and low temperature conditions.

In the south of Japan it is warmer than in the north and evergreen and deciduous forests are dominant in south and north Japan, respectively. In the understory the light climate is dependent on the leaf canopy above it: a deciduous canopy opens in winter whereas under an evergreen canopy it is all the year dark. So when the common understory shrub Aucuba japonica does not have strong habitat nice specialization it is on average over the year exposed to lower light conditions and higher temperature in the south than in the north of Japan.

For this seminar I question whether Aucuba japonica acclimates to these different growth conditions and what are the differences in acclimation between south and north ecotypes?


○Study on the trade-off relations between defensive compounds of seeds and mortality in seeds and seedlings

 春増翔太

森林における多樹種共存機構解明のため今年度行ってきた研究と今後の予定につ いて発表致します。種子中の防御物質に対する投資は種子の死亡率とトレードオ フの関係にあるという仮説の基、カエデ科樹種6種の化学成分分析及び実験を 行った。具体的には
 ・種子中のフェノール類には哺乳類による捕食を回避する効果がある
 ・種子中のフェノール類には菌類による死亡を回避する効果がある
 ・フェノール類の濃度は樹種の地形分布と関係し、菌による死亡が期待される 谷部に分布する樹種ほど菌害を避ける効果が強い
という3つの仮説の検証を分析したデータや実験に基づいて検証する。


○イチジク-イチジクコバチの絶対送粉共生を安定させる要因
  -コバチの近交弱勢の影響の検証-

 片渕正紀

イチジクーイチジクコバチの絶対送粉共生を成り立たせる上で、一つの花序内の創設雌の数は重要である。 種子生産とコバチの孵化が別々の花序で行われる雌雄異株イチジクでは、花序内の創設雌が増えると、イチジクの種子生産が増加することが前年までの調査で示された。
またその他の先行研究では、産卵場所の競争などにより創設雌あたりの産卵数が減少することが明らかになっている。 このように、一つの花序内に複数の創設雌が入ることがイチジクには有利、コバチには不利に思える。
そこで、「複数の創設雌が産卵することにより、花序内の次世代のコバチが近親交配を回避できることが、コバチにとって有利である」という仮説のもと、現在行っている実験を紹介する。


○ What Limits Seedling Recruitment in Plant Populations? A Closer Look at Seed Limitation and Establishment Limitation

 Regielene Gonzales

The life cycle of seed plants comprises two ecologically distinct phases, a sessile phase and a dispersal phase. Recruitment of individuals to plant populations represents the interface between these phases. Plant recruitment in the early stages of the plant life cycle is primarily determined by two constraints: the availability of environmentally suitable sites, and the likelihood of seeds reaching those sites. These two limitations to pla nt recruitment are referred to as establishment limitation and seed limitation, respectively. Seed limited populations have fewer individuals than possible because seeds fail to arrive at saturating densities at all potential recruitment sites. On the other hand, establishment limited populations have sizes that are constrained by the number and quality of available sites for establishment, not by the number of seeds. These two limitations r epresent two ends of a continuum, but are not mutually exclusive.
Distinguishing the roles of seed limitation and establishment limitation in controlling plant species distributions is important for understanding community structure, invasion, and restoration. In this seminar, I will present evidences of the occurrence of these limitations in nature and show scientific studies that distinguish these limitations in plant populations.


○ サワギキョウにおける花序内花間性投資パターン:花序サイズによる違い

 板垣智之

いくつの植物で花序(花茎上の花の集まり)内の花間で雄・雌繁殖器官への投 資量に違いがあることがわかってきた。このような違いは、花ごとの送受粉環 境や資源の得やすさが、花序内で異なることに対する適応と説明されている。 本研究では、花序の大きさが花間の性投資量の違いに与える影響を調べた。花 序の大きさは個体の資源量と関係し、さらに訪花昆虫の誘引・隣花受粉に影響 すると考えられる。サワギキョウを材料に、異なる大きさの花序ごとに、花あ たり花粉・胚珠・種子数を花間で比較した。その結果、大きな花序ほど、開花 の遅い花における胚珠・種子数が減少していることがわかった。これらの結果 から、サワギキョウでは、雌器官への投資については花序の大きさに依存した 性投資パターンがあることがわかった。


○成長と生存のトレードオフは、多種の共存を可能にするか?

 小嶋智巳

 更新戦略を介した植物の共存メカニズムについてシミュレーションモデルを 作り、解析しています。その途中経過を発表します。
 生存率と成長速度がトレードオフ関係にあれば、多種が共存可能であると言 われています。実際に熱帯林や温帯林における研究では、共存する種間で、生 存率と成長速度が負の関係にあることが報告されています。この実際に観測さ れたトレードオフ関係をモデル組み込みました。
 シミュレーションの結果、生涯にわたって一定の環境下で一定の成長速度・ 生存率で成長すると仮定した場合には、共存が困難でした。しかし、小さな個 体は成木によって被陰され、その成木が死亡するとギャップができる、という 環境変化を取り入れたところ、複数種が共存可能な状況が生まれました。この 共存には、被陰下での生存率と、ギャップでの成長速度のトレードオフが重要 であるということが示唆されています。この結果について、未だ納得のいく解 釈が出来ていません。
 さらにモデルを改良し、繁殖開始サイズ(成熟サイズ)も一つの戦略として進 化可能なパラメータとすれば、より多様なシミュレーションを行うことが出来ます。
 今回は、それらを用いるうえで起こりうる問題点や、予測可能なことについてを紹介します。


○異なる標高の湿原植物群集における空間構造と光獲得競争の季節変化
The seasonal change of canopy structure and light competition in wetland plant communities at different altitudes

 神山千穂

近年の地球温暖化に伴い、植物群集内の気候変動が種間相互作用に影響し、さらには種組成を変化させることが懸念されている。群集の環境応答の理解と予測には、そのプロセスとなる種間相互作用の解明が必要である。本研究は、最も重要な種間相互作用の一つとして、光をめぐる資源獲得競争に着目した。温暖化の影響に敏感な生態系の一つと考えられる高標高に成立する湿原植物群集(青森県八甲田山)を対象とし、標高傾度(590, 1030, 1290m)を利用して異なる温度環境にある群集間の比較を行った。一昨 年度、地上部現存量が最大になる8月に層別刈取を行い、競争力の指標として地上部重量あたりの光獲得量(瞬間光獲得効率)が、落葉種に比べて常緑種で低いなど、標高に関わらず機能型(functional type)によって異なることが 明らかになった。
今回のセミナーでは、一年を通じた競争関係を明らかにすることを目的とし、各種の葉のフェノロジー追跡を行って群集の空間構造を推定し、各種の一年間の光獲得効率(年光獲得効率)を計算した結果について紹介する。 各種はそれぞれ異なるフェノロジーを有し、一年を通して経験する光環境は異なった。年光獲得効率は種間、機能型間で大きく異ならなかった。8月に瞬間光獲得効率が低かった種は、雪解け直後の春に展開していた葉が、群落上層に他種の葉が展開する前に強い光を受けていたことで、他種と同等の年光獲得効率を実現していた。このことは、葉のフェノロジーが光獲得競争に大きな役割をもつことを示している。また、温暖化に伴う融雪期間の延長によって、競争関係が変化する可能性を示唆している。


○The Evolutionary Enigma of Sexual Reproduction

University of British Columbia  Sarah P. Otto

Sex and recombination are widespread, but explaining th ese phen most difficult problems in evolutionary biology. Recombination is advantageous when different individuals in a population carry different advantageous alleles. By bringing together advantageous alleles onto the same chromosome, recombination speeds up the process of adaptation and opposes the fixation of harmful mutations by means of Muller's ratchet. Nevertheless, adaptive substitutions favour sex and recombination only if the rate of adaptive mutation is high, and Muller's ratchet operates only in small or asexual populations. Here, by tracking the fate of modifier alleles that alter the frequency of sex and recombination, we show that background selection against deleterious mutant alleles provides a stochastic advantage to sex and recombination that increases with population size. The advantage arises because, with low levels of recombination, selection at other loci severely reduces the effective population size and genetic variance in fitness at a focal locus (the Hill -Roberts lation less able to respond to selection and to rid itself of deleterious mutations. Sex and recombination reveal the hidden genetic variance in fitness by combining chromosomes of intermediate fitness to create chromosomes that are relatively free of (or are loaded with) deleterious mutations. This increase in genetic variance within finite populations improves the response to selection and generates a substantial advantage to sex and recombination that is fairly insensitive to the form of epistatic interactions between deleterious alleles. The mechanism supported by our results offers a robust and broadly applicable explanation for the evolutionary advantage of recombination and can explain the spread of costly sex.


○異なる風衝ストレス下にある常緑針葉樹ハイマツの葉特性

 永野聡一郎

どのような場所でも、植物は生長や生存を制限する各種のストレスにさらされている。一般的には、貧栄養、乾燥や強光などストレスが強くはたらく場所に生育する植物ほど、厚く丈夫な葉を備えている。
ハイマツ(Pinus pumila)は、日本の山岳地における優占種のひとつである。本種は生育する微地形によって生育型を変化させている。例えば、植物高は風衝地よりも風背地において高い。また風衝地では、ハイマツの針葉が褐変化し、針葉に多くのストレスがかかっているように見える。冬季の風衝作用は、葉に物理的なダメージを与えると考えられる。本研究では、風衝地のハイマツが厚く丈夫な葉を持つのではないかとの仮説を立て、風衝作用の異なる立地に生育するハイマツの針葉の葉特性を調べた。
その結果、予想とは逆に、葉面積あたりの葉重(LMA)は、風衝地よりも風背地のほうが高く、風衝地のハイマツは厚い葉を備えてはいなかった。針葉の総断面積と表皮組織の面積は比例の関係にあり、広い面積の葉ほど厚い表皮を備えていた。当年葉の葉面積あたりの最大光合成速度(Amax)は、生育する微地形に関わらずほぼ等しかったが、一年葉では風衝地で越冬したハイマツが風背地のものに比べて低下していた。また、葉面積あたりの窒素含量(Narea)は、風衝地よりも風背地で生育するもののほうが高く、LMAに応じて高くなる傾向があった。さらに、NareaとAmaxの間には総じて緩やかな正の相関が見られた。風衝地のハイマツの葉寿命は、風背地のそれよりも短く、風衝地のハイマツは、丈夫で長寿命の葉よりもコストの安い短寿命の葉を作っていると考えられた。


○都市化の植物への影響

 小黒芳生

これまでの研究で、進化はあっという間に起こり、その速さは最初の 方ほど速いことがわかってきました。選択の働き方を知るには、進化の 最初の方を調べなくてはいけないと考えました。都市は比較的新しい環境 です。もし都市環境が、植物にこれまでと違った選択となるなら、都市 を用いて現在進行形の進化を調べられるのではないかと考えました。 セミナーではこれまでにやったことと、これからやろうと思っていることに ついて話します。


○ 一年草における光合成窒素利用効率の季節変化の解析

 青木信策

窒素は、植物体内に含まれる多くのタンパク質の構成元素で、特に光合成器官のタンパク質へと配分されている。窒素量と葉の最大光合成速度(Pmax)には密接な関係があり、窒素量あたりのPmaxは、窒素利用効率(PNUE)と言われている。PNUEは、種間によって異なり、多くの研究報告がある。オオオナモミでは、PNUEは計測した月により異なるという結果がでていた(松本 2006修論など)ので、同じ窒素量でも 季節によりPmaxが変わる理由を解析し、さらにオオオナモミとシロザを使い、一年草の季節間での光合成速度の変化について植物生理的観点から調べた。
今回の実験では、7月から9月までそれぞれ月末一週間と、10月の上旬〜中旬の計4回に分けて光合成を測定し、測定時にリーフパンチして保存したサンプルを用い、後日ルビスコ活性や葉の窒素量を測定した。
その結果、光合成速度と窒素量の測定から、PNUEに季節間の変化はなく、期待したとおりにならなかった。そこで、前の実験との違いを調べてみると、まず、測定時の葉温があげられる。前の実験では月により葉温を変えていたが、今回の実験では葉温を統一した。また、前の実験では、光合成速度の測定場所が野外であったが、今回は室内でおこなっていたことも異なる点である。
次に、光合成速度を決める要因(Ci、Cc、ルビスコ活性)について、季節間での解析もおこなった。
その結果、細胞間隙CO?濃度(Ci)はあまり変化しなかった。葉緑体内CO?濃度(Cc)は、光合成速度測定時に同時に測っていたクロロフィル蛍光により計測したところ、若干の変動はあるものの、季節を通してほぼ一定だった。ルビスコの活性化率は季節を通してずっと高いままで変化はなかったが、ルビスコの活性は季節を通して減少していた。これらから、オオオナモミとシロザでは、季節がたつにつれて光合成速度は減少するが、Ci、Cc、ルビスコの活性化率には変化はなく、窒素のみに制限されているという結果になった。


○ 過去の土地利用が広葉樹二次林の種組成に与える影響

 石田敏

人為撹乱下の二次林では原生林では有り得ない植生を取ることがある。これは人為撹乱が通常の自然撹乱とは異なり、非常に大規模かつ高頻度に行われることによってもたらされる。これまではそうした人為撹乱が起こってからどのようにその森林が回復、遷移していくかを植物の種特性をもとに考えられてきた。これらの研究では最後の撹乱からの回復を考えていたが本研究ではより強い土地利用がされていれば過去の人為撹乱も現在の植生に影響を及ぼし得ると考えた。
今回調査地として馬の放牧、火入れによって何百年も草地として利用されていた場所を選び、100年前の地形図から過去の土地利用を推定、「草地」と「森林」とに大別した。仮説として草地では
・大規模な撹乱による植物種の加入制限
・火入れ、放牧による特定の種が排除
が起こりそれが現在までに回復されていない、と考えた。これを検証するために 植物種の生活型、サイズ、散布形態などの生活史特性に着目して、DCA解析を行った。結果では草地だったところでは翼果の樹木種が少ない、ということが導き出された。この結果からどのようなことがさらに言えるのかを考察していく。


○ 都市における鳥類多様性を高めるための公園・緑地条件とは何か

 今井はるか

都市化が進むにつれて、自然の豊かさは低下していきます。自然の豊かな都市を目指 すためには多様な生物の生息地となる公園緑地が必要となります。ここでは鳥類の多 様性を自然の豊かさの指標として利用し、効率よく多様性を高めることのできる環境 条件を探りました。仙台市の公園緑地20箇所で、鳥類群集と環境要因(stand level とlandscape level)を調べ、そのデータを基に多様性が高い群集とはどのような群 集か、また多様性を高めるための環境条件はどのようなものか、という二つの問いに ついてそれぞれ答えを導き、最後に二つの答えを合わせて考察をしました。これまで に鳥類の多様性と都市環境の関係について調べた研究は多く見られますが、本研究で は、鳥類の多様性について考える際に今まではあまり注目されなかった機能群に重き をおいて解析を進めました。最初の問いについては、多様性が高い群集では、動物食 種・葉、枝上で採餌する種・夏鳥が増加するという答えが導かれ、二つ目の問いにつ いては、landscape levelでの見通しの良さや、緑地・水域面積の占める割合、stand levelでの植被のある地面の割合、低木・藪の割合が多様性を高めるのに効くという 答えが導かれました。明日の発表では、答えをどのようにして導き、そこから更にど のような考察ができるのかについて詳しく説明したいと思います。


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