2009年度講座セミナー要旨

(2009-12-19更新)

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○ The role of Rubisco and cell walls in the interspecific variation in photosynthetic capacity

彦坂幸毅


Photosynthetic capacity is known to vary considerably among species. Its physiological cause and ecological significance have been one of the most fundamental questions in plant ecophysiology. We studied the contents of Rubisco (a key enzyme of photosynthesis) and cell walls in leaves of 26 species with a large variation in photosynthetic rates. We focused on photosynthetic nitrogen-use efficiency (PNUE, photosynthetic rate per nitrogen), which can be expressed as the product of Rubisco-use efficiency (RBUE, photosynthetic rate per Rubisco) and Rubisco nitrogen fraction (RNF, Rubisco nitrogen per total leaf nitrogen). RBUE accounted for 70% of the interspecific variation in PNUE. The variation in RBUE was ascribed partly to stomatal conductance, and other factors such as mesophyll conductance and Rubisco kinetics might also be involved. RNF was also significantly related to PNUE but the correlation was relatively weak. Cell wall nitrogen fraction (WNF, cell wall nitrogen per total leaf nitrogen) increased with increasing leaf mass per area, but there was no correlation between RNF and WNF. These results suggest that nitrogen allocation to cell walls does not explain the variation in PNUE. The difference in PNUE was not caused by a sole factor that was markedly different among species but by several factors each of which was slightly disadvantageous in low PNUE species.

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○演題:誰そと対立す:親子の対立理論とゲノム内の対立理論の統合

酒井 聡樹


家族の問題は、動植物の繁殖戦略の進化に大きな影響を及ぼしている。♀親のみが子に資源供給する生物では、

♀親の利害

子の、♀親由来遺伝子の利害

子の、♂親由来遺伝子の利害

の不一致が家族の問題を引き起こす。それは、親子の対立・ゲノム内の対立という形で現れる。

家族の問題に取り組むためには、上記三者の利害を同時に考える必要があるはずである。ところがこれまでの研究では、親と子の利害の対立(ゲノム内対立は無視)のみに着目するか、♀親由来遺伝子と♂親由来遺伝子の利害の対立(親子の対立は無視)のみに着目するかのどちらかであった。本研究では、ゲーム理論を用いて、三者の利害関係を考慮 して、どのような条件下で、親子の対立とゲノム内対立のどちらが顕在化するのか(もう片方は隠れてしまう)を調べた。その結果、1) ♀親による、子の資源要求の抑制力、2) 発達中の子の死亡様態(過度の資源要求により一腹の子が共倒れするのか、過度に要求する子のみが自滅するのか)が、各対立の顕在化に影響することがわかった。大まかな傾向としては、♀親による抑制力が弱く、かつ、過度に要求する子のみが自滅する場合にはゲノム対立が顕在化する。これ以外の場合は親子対立が顕在化する。また、遺伝的刷り込みが進化しにくいことも説明することが出来た。

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○ モンゴルの放牧地生態系における持続的土地管理への生態学的基準

佐々木 雄大


放牧地生態学研究の最終目標は、 放牧地管理および生物多様性保全の観点から家 畜放牧が自然環境とその変容に与える影響を予測することにある。しかし、放牧 地生態系を捉える概念は二極化しており、理論に基づく概念に厳密にとらわれ過 ぎることで、現実の系に即した管理への応用が十分に達成されていないのが現状 である。また放牧などの撹乱による種の共存に支えられる、種多様性の高い群集 は土地管理の上でも重要とは限らないため、放牧地の持続的利用と生物多様性保 全の両立は困難となる場合が考えられる。現在の放牧地生態学は、これらの問題 に包括的に対応した管理論を提供できていない。 研究の対象としたモンゴルの放牧地生態系では、社会主義体制の崩壊により、放 牧圧を適切に分散させていたと考えられる土地利用コントロールシステムが消失 した。それに伴って、放牧圧の局所集中が顕在化するようになり、実際に土地荒 廃が引き起こされているという報告例がある。放牧地生態系においては、放牧は 主要な撹乱要因であるため、このような土地利用の変化は系全体における撹乱体 制の変化につながると考えられる。 以上のような撹乱体制の変化に伴う土地荒廃を予防する手段として、適切な管理 基準の確立が求められている。さらに、生態系の頑健性を維持しつつ持続的な利 用を行っていくためには、導かれる管理基準は生物多様性の保全を包含した基準 である必要がある。 そこで、放牧地生態系における種多様性および機能的多様性の維持かつ持続的土 地利用を可能にする頑健な生態学的基準を提供するため、生態学の理論体系を放 牧地管理に結び付け、その上で予測的価値を持った生態学的管理基準を抽出する こと、を大きな目的として研究を行ってきた。 本講演では、放牧地生態系を捉えるための重要な概念の強みと弱みを整理しなが ら、種々の群集生態学理論(生態学的閾値、中規模撹乱仮説、機能的冗長性)を 研究の枠組みに据えることにより、いかにしてこれらの概念を柔軟に取り入れた 持続的土地管理のための生態学的基準が抽出できるのかということを簡潔に報告 したい。

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○ 生態系の地上部・地下部特性に外来植物はどう影響するか?

黒川 紘子


近年、外来生物の侵入による生態系の改変が世界中で大きな問題となっており、 侵入種となり得る外来生物の特性や分布域拡大メカニズムの解明、および侵入種 が生態系に与える影響の予測が早急に求められている。例えば、侵略的外来植物 はその旺盛な成長や繁殖力により在来植物を駆逐するのみならず、植物を利用す る地上部・地下部食物網にも影響を及ぼし得る。特に、植物―土壌フィードバッ クにおける影響は、炭素・栄養塩循環といった生態系レベルの影響や、侵入植物 の分布域拡大につながる可能性もある。このような影響は、被食・分解に関わる 植物の機能的性質が、外来植物と在来植物で大きく異なるときに顕著になると考 えられる。そこで、外来植物の影響予測・リスク評価には、侵入先の植物群集や 食物網において外来植物がどのような特性を持っているか、といった群集や食物 網を考慮したアプローチが必要である。

今回は、ニュージーランドの氾濫原で行った二つの研究を主に紹介したい。こ の氾濫原では洪水による撹乱後、外来種を多く含む植物群集が成立している。一 つ目の研究では、葉の機能的性質や被食率・分解速度において「外来植物」は 「在来植物」とどう異なるのかを41種の低木を用いて比較した。その結果、被食 率や分解速度とそれに関わる葉の性質は外来低木と在来低木で特に異ならないと いうことが明らかとなった。二つ目の研究では、この氾濫原の植物群集構造を除 去実験で操作し、どんな植物が地上部、地下部特性に強い影響を与えるのかを調 査した。一般には、群集内で占めるバイオマスの大きな種が生態特性に強い影響 を持つ(Mass ratio hypothesis)と考えられているが、土壌微生物群集や線虫 群集特性に対してはその予測に反し、バイオマスの小さな外来草本類の方がバイ オマスの大きな在来・外来低木より強い影響を与えることが明らかとなった。こ れは、外来草本類の機能的性質が在来・外来低木と大きく異なるためと考えられ る。これらの研究は、単に「外来種である」ことや「バイオマスの大きさ」だけ では、生態系における外来植物の影響の強さや方向性を予測できないことを示唆 している。さまざまな生態系における外来植物の影響を予測するには、特に外来 植物の性質と侵入先の生態系の性質に注目することの重要性を議論したい。

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○ オオヤマオダマキにおける、花序内の花ごとの雄性先熟性の程度と自殖率の関係

板垣 智之


複数の花を咲かせる植物において、花序(花茎内の複数の花のまとまり)内の花ごとに、花粉数や胚珠数など花形質、種子数など繁殖成功が異なる場合が知られている。このような花間の違いは、花ごとの送受粉環境や資源の得やすさの違いによってもたらされると説明されている。

雌雄異熟性の植物は、雌雄の繁殖機能の発現を時間的に分離して自殖を避ける。オオヤマオダマキは雄性先熟(開花直後は雄機能のみ発現)の両性花を咲かせる。先攻研究から、花序内の花間で、開花から雌機能発現までの期間に違いがあることが分かった。この違いは、花間の自殖率の違いをもたらすのではないか。

本研究では(1)オオヤマオダマキの花序内で、1番目と2番目にに開花する花で自殖率が異なるか?(2)花ごとの花形質と自殖にどのように関係があるかか?を明らかにする。調査は北上山地(岩手)の早坂高原と袖山高原で行った。

自殖率のデータはまだありません(測定のための実験中)。各花の形質・繁殖成功の違いや、自殖によってもたらされると考えられる集団ごとの遺伝的多様性などのデータを紹介します。

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○ ハクサンハタザオからイブキハタザオへの標高適応に伴う耐凍性の獲得と光合成機能への影響

永野 聡一郎


標高が高くなるにつれて植物を取り囲む環境要因は厳しさを増す。なかでも低温は、植物の分布に重要な決定要因である。低温に対して植物のとりうる生活史戦略として、低温回避と低温耐性がある。このうち低温耐性は零度より高い温度に対する耐性(耐冷性)と氷点下の温度に対する耐性(耐凍性)についてそれぞれ研究されてきた。とくに致命的な氷点下の温度に対する耐凍性は、(1)細胞質における糖や糖タンパクの蓄積による凝固点降下、(2)細胞膜におけるリン脂質脂肪酸の不飽和化、低温誘導性タンパク質の蓄積と(3)細胞壁アポプラストにおける不凍性タンパク質の蓄積による膜構造の安定化によってもたらされる。しかし、これら耐凍性の実現には糖の蓄積や脂肪酸の配向変化などにコストがかかり、物質収支に影響を与えるばかりでなく、細胞の機能的変化に伴い生産性にも影響を与える事が予想される

本研究では、アブラナ科シロイヌナズナ属のハクサンハタザオと、本種から派生的に分化した高標高生態型のイブキハタザオを対象に、I. 標高適応に際して獲得されたと予想される耐凍性を評価し、II. 耐凍性の実現に伴うコストと生産性への影響を評価することを目的とする。寒冷適応を多角的に解析することは、種の適応的分化の質的な裏付けとなると考えられる。

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○ 共存する植物種間での、生活史特性の結びつき

小嶋 智己


これまで、植物の種間でさまざまな生活史特性間の相関関係が調べられてきた。特に近年、葉の形態的・生理的特性が、全球レベルでひとつの軸に乗るという大きな傾向が示された。しかしこの大まかな傾向は、同一サイト内での値の大きなバラつきについては説明できない。これについては、主に熱帯林などで、同一森林内で共存する樹種間での葉特性・樹形・成長特性・ハビタットなどの関係が盛んに調べられてきた。これらの研究から、窒素や炭素などの資源配分のトレードオフを介した、樹種間の形質の一連の結びつき(シンドローム)が示唆される。すなわち、早い成長を実現する形質群を持つ種と、高い生存率を実現する形質群をもつ種を両端として、多種が共存している。さらに、これらの成長特性とは直接の因果関係を持たないと思われる繁殖特性や繁殖特性も、これらの形質群と相関しているという報告がある。熱帯樹木の場合、さまざまな生活史特性が比較的ひとつの軸で説明しやすいと言われる。これに対し、草本群落や林床・下層植物を含めた研究は驚くほど少なく、明瞭な形質間の関係が示されているものも少ない。さらに、林冠木種間での傾向とは逆の傾向を示す場合もある。これは、最大サイズや生育階層、生活型の異なる種を同時に扱っているためと思われる。セミナーでは、林冠樹種間でみられる形質間の結びつきをお話し、最後に、林床群落での共存種間の形質間関係を調べる研究計画をお話しします。

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○ 遺伝情報と群集構造 ~ phylogenetic community ecology ~

片渕 正紀


近年、遺伝情報が容易に得られるようになったことで、分子系統解析による生物群集の形成過程の解析 (phylogenetic community ecology)が盛んに行われるようになった。それらの研究は(1)群集形成には局所環境が重要となるため、類似した生物が近くに分布した結果、空間的に近い生物は系統的に近縁になる、(2)群集形成には競争が重要となるため、類似した生物が競争排除された結果、空間的に近い生物は系統的に遠縁になる、という予測のもと、群集形成の過程を明らかにしようとしている。

今回のセミナーでは、”phylogenetic community ecology” の概念と最近の成果を紹介し、今後の課題を取り上げる。

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○ 落葉樹林内の林床植物の生理生態:光環境の季節変化がもたらす生長・生存・繁殖への影響

神山 千穂


落葉種が上層を占める植物群集では、群集下層の光環境は上層種のフェノロジーに強く依存する。春先、上層種が展葉を始める前までは十分な光が下層まで届き、上層種の展葉に伴って下層の光環境は急激に悪くなる。秋になると、上層種の落葉に伴って下層の光環境は再び良くなる。このような季節的に変化する群集下層の光環境が、下層種の特性に与える影響については、これまで温帯落葉樹林内で主に研究されてきた。春先の明るい光環境に出現する春植物(spring ephemeral)や、林冠木の展葉と同じ頃に展葉し夏の暗い光環境に生育する植物(summer-green)や、常緑性の葉をもつ植物(evergreen, semi-evergreen)など、下層種の生活パターンは様々である。 今回のレビューでは、まず、落葉樹林下層に生育する異なる生活パターンを持つ種について、光環境や温度環境を反映した光合成特性の季節変化を紹介する。次に、特に春先の光環境の大切さに着目する。また、林床植物の繁殖特性が光合成生産を介して光環境の影響を強く受けていることを示した最近の研究を挙げ、最後に、林床の光環境と林床植物の多様性の関係について紹介する。

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○景観レベルでの樹木の絶滅率変化

石田 敏


景観スケールで森林の種組成を考えたとき、森林そのものだけで なく周囲の環境や生物的要因、無生物的要因双方によって 大きく変化する。特に人間活動、土地利用による影響は大きく、 生物多様性保護の観点からも考え避けることはできない。 しかし種組成に対する人間活動の影響は単独で指標化することは困難であり、 その他の要因によって非常に左右される。今回は(1)人間の土地利用、 (2)地形、標高、(3)種特性、(4)周囲環境などの観点から森林に与える影響、 また要因同士の相互作用を中心に考えていく。

また自分の研究紹介として「景観レベルでの樹木の絶滅率変化」の概要を お話します。正木さんの先行研究である自然林の樹木遷移と自分の研究 で考えている伐採による種組成変化を合わせて行っている、景観内の 優占樹木の絶滅率予測を簡単に説明します。

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○ Species distribution models (SDMs) and climate change

島崎 仁哉


SDMsとは、野外観察データを環境の予測変数と関連付ける実験モデルのことで 統計的・理論的に得られる応答曲面(Response Surface)に基づいている (Guisan & Zimmermann 2000)。

本セミナーでは、気候変動に対する生物の応答を考える上でSDMsが有用なツー ルであることを紹介する。

まず、1)温暖化に伴う森林帯上昇を報告するSCIENCEに掲載された論文 (Lenoir et al. 2008)を紹介し、実際に温暖化の影響が出ていることを確認する。 その上で、2)温暖化影響予測研究におけるSDMsの有用性を示した後、3)私が昨年 行った八甲田山オオシラビソ温暖化研究の更なる発展成果を紹介する。 最後に、4)今までの研究の流れをくんだ修士研究計画について触れる。

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○ レビューセミナー

今廣 佐和子


近年、特に日本海側で、山腹の広葉樹林で葉が赤くなって枯死する現象が目立っ ている。この、落葉ナラ類(コナラ・ミズナラなど)や常緑のカシ類(アラカシ・ アカガシなど)に発生している集団枯死のことを総称して「ナラ枯れ」と呼ぶ。 「ナラ枯れ」は、体表面に病原菌であるナラ菌(Raffaelea quercivora)を付着さ せたカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)が、健全なナラ類に穿入する ことで、樹幹内にナラ菌が繁殖して樹液の運搬を阻害してしまうために起こる枯 死である。 2005年のナラ枯れによる全国被害面積は2000ha近くに達し、現在も被害地は拡大 し続けており、これ以上被害が拡大しないように対処が必要な状況にある。 現在、ナラ枯れ病の拡大防止のために、メカニズムの解明、GISを駆使した伝 播の予測、防除法の開発が盛んに行われており、本セミナーでは、これらの研究 から今までわかってきたことを紹介する。 また、私が昨年行った、二次林のナラ枯れ病に対する脆弱性・回復性決定ファク ターを求める研究についての報告と共に、現在進行中の修士研究計画についても 述べる。

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○ どんなお花が食べられる?

小黒 芳生


繁殖器官に食害を受けると、植物の種子生産が低下し、個体の密度にも影響を与える。

では、どのような特徴を持つ植物が、繁殖器官に食害を受けやすいのだろうか?

これを明らかにするため、キク科植物13種で窒素濃度・炭素濃度・在来/外来・ 頭花の大きさ・数・乳液ありなし・多年草/一年草を調べ、どのパラメーターで食害を説明 できるかを解析した。

大きな頭花を持つ種・頭花の数が少ない種在来種が繁殖器官に食害を受けやすかった。

在来種の方が食害を受けやすいのはEnemy Release Hypothesisの予測に一致する。 また、食害を受ける植物を決めるのは、食害を行う幼虫ではなく、親であるため、 中身よりも見た目が食害の受けやすさに大きな影響を与えているのかもしれない。

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○ 渓畔林構成樹種の河川撹乱に対する依存性

二本松 裕太


渓畔林の特徴として、多様な種組成と群集構造の複雑さがあげられるが、それはその特異な立地環境と撹乱体制が生み出していると考えられる。河川の侵食・堆積の作用によって、流路・砂礫堆・河岸段丘・谷壁斜面などの複雑な地形構造が作り出され、樹木種にとって様々な立地環境が提供される。また、洪水や土石流といった河川撹乱は流路における侵食・堆積を引き起こすばかりでなく、渓畔林に成立する群集に破壊的な影響をもたらす。

本研究は、渓畔林構成樹種が実際にはどのような環境条件の下でよく定着しているのか、その更新にはどのような要因が特に重要であるのかを調べ、そこから各樹種の河川撹乱との関わりを明らかにすることを目的とする。

調査地は青森県八甲田の蔦川・矢櫃沢・奥入瀬川周辺および菅沼湖畔で、本調査では渓畔域によく見られるサワグルミ・トチノキ・カツラ・オヒョウ・ドロノキ・オオバヤナギ・ケヤキ、湿地によく見られるヤチダモ、さらに対照のためにブナ・ミズナラを対象とした。調査方法は、流路沿い、あるいは湖畔で等間隔に小さなポイントを大量に設定し、そこでの各樹種の成木・稚樹・実生の有無と、撹乱と関係のありそうな7項目の環境条件を調べた。そして各ポイントで得られたデータはGLM解析を行い、各樹種の存在確率には、どのような環境条件が強くきいているのかを調べた。さらに主成分分析より、各種のニッチの比較を試みた。

GLMの結果から、種によって、水面からの比高やテラス・山腹斜面・堆積面・湿地などといった地形の違い、表層の基質、林床の植生の違いなど、存在確率にきいている環境条件は様々であるということがわかった。主成分分析の結果から、各種のすみ分けを部分的に確認することができた。

今回調べた環境条件(比高、基質、地形、傾斜、土壌の深さ、林冠の様子、林床の植生)は、いずれも河川の浸食・堆積作用や過去に受けた撹乱に関係しているだろう。このことと本調査の解析結果から、この調査地における各樹種と河川撹乱の関わり方を考えることができる。

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○ 里山林を構成する樹木の萌芽特性(仮)

柴田 嶺


多くの樹種で火災や伐採などにより地上部が失われた際に萌芽再生する能力がある。この萌芽再生能力は撹乱への適応であると考えられ、実際に山火事後の植生回復に重要な役割を果たしている。一方で樹種によって萌芽再生能力には著しい差があるが、それぞれの樹種の萌芽特性を詳しく調べた研究はまだ少ない。本セミナーでは、私が現在行っている小川の2次林の主構成樹木15種の萌芽特性を調べる研究の途中経過および今後の計画を報告する。

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○ 卒業研究中間発表:イタドリにおける温度-光合成特性の緯度・標高間比較

町野 諭


植物は生育温度に応答して最適な光合成速度を保てるように調節することが出来る。その調節能力は種間で異なり、同種においても遺伝型の違いによって異なることが知られている。しかし、この光合成温度依存性変化の生理的メカニズムの違いについてはまだわかっていないことが多い。このメカニズムを明らかにするため、緯度・標高の異なる3地点(弘前、富士山、東京)から採取したイタドリを二つの生育温度で生育し、温度-光合成曲線の変化とその生理的要因を比較する。本セミナーでは、今までの結果とこれからの方針について発表します。

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○ 卒業研究中間発表:CO2spring由来の植物を用いた、高CO2環境への適応的進化の調査

梶川 尚


近年CO2濃度の上昇が続いている。植物を短期的に将来の高CO2環境で生育すると、どのように応答するかという研究は非常に多くある。しかし、長期的にもその性質が維持されるかは不明確である。そこで高濃度のCO2が数十年前から噴出していたCO2spring周辺ならば、植物が既に高CO2環境に適応した性質を獲得している可能性があり、実際の適応を確認できるかもしれない。市川卒論(2008)において、いくつかのCO2spring由来のオオバコで性質の変化を確認した。そこで本研究では、この先行研究で特に特徴的だった、高CO2由来の個体で気孔コンダクタンスが低かったことに注目し、他のCO2spring由来の個体や他種でも同様の変化が見られるか、気孔数の減少によりコンダクタンスが低下したのではないか、といったことを調べる。

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○ 八甲田山における温暖化に対する樹木の応答

阿部 ゆかり


20世紀以降、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が原因で地球全体の温度が上昇する地球温暖化が進行している。地球温暖化によって世界的に多くのことが懸念されている。その中のひとつとして挙げられるのが、植物分布域の高標高方向への変化である。1900年以降の気温の変化に伴い、森林限界線の変化が確認されている(Kullman,2001)。

本研究では北日本の山岳地帯を代表する高木樹種であるブナ、オオシラビソに着目し、近年の温暖化に対する2樹種への影響を標高別に検証する。これにより、北日本の山岳地帯において近年の温暖化の影響がどのようなメカニズムによって起きているのかを解明し、今後の変化をより高い精度で予測することを目的とした。

手法としては、まずこれまでの温暖化による樹木成長への影響の有無を検証する。続いて、樹木成長の変動と関連する気象条件を検証する。最後に、樹木の水ストレスの有無を検証する。

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○ progress seminar

Regielene Gonzales


The maintenance of biodiversity in any ecosystem is one of the most important goals of environmental management. This also applies to man- made/disturbed communities, such as conifer plantations. Conifer plantations must not only provide wood, but serve other functions, including biodiversity conservation. It is important to know if these plantations maintain forest diversity, and which species, if any, might be experiencing recruitment limi tation in them. To examine the diversity of broad-leaved species in conifer plantations, we censused the sapling and seedling species that occurred in primary broad-leaved forests in Ogawa, and also did the same in Cryptomeria plantations whose distances were near (~10-15 m), intermediate (~50-200 m), or far (~300+ m) from the primary forest. The trends in the changes in species composition with respect to distance - with an emphasis on func tional traits related to recruitment - were analyzed and are here reported. The implications of these trends are discussed.

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○ 修士論文構想発表:景観スケールにおける土地利用の影響と樹木種の絶滅確率

石田 敏


人間による土地利用によって森林は様々な影響を受け、それは 管理方法、時間経過、強度によって異なる。そのため人間が 種多様性や特定の樹種に負の影響を及ぼすことなく、有用に森林を 利用するためには過去、現在の土地利用方針がどのような影響を 与えていたか、いるかを理解することは重要である。本研究では 管理方法と面積に着目して、景観レベルでの種組成にどのような 影響が出ているかを示す。

種組成はマトリクス上に表し、その変化は大きく分けて放置管理 による自然遷移と伐採を考える。まず最初にこの2つの土地利用が どのように種組成を表すマトリクスを変化させるかを述べる。 次に景観レベルで見たときの管理形態の変遷について見てみる。 小川原生林を含む景観を原生林、二次林、スギ林、草地の 4つの土地管理形態に分けて考え、時代ごとにどのような管理方針 を立てていたかについて説明する。そして、それらを統合して 各時代間の管理シナリオを継続していった時に景観全体の種組成 がどのように違ってくるかを予測していく。最後に上記の考え方に、 調査によって得られたプロット、群集間の種構成の違いを分散として 取り入れてシミュレーションによる樹種ごとの絶滅確率の解析も 行った。

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○ 修士論文構想発表:

松橋 彩衣子


花は進化の過程で様々な形に多様化してきた。花の形を決める重要な要素の一 つに花器官数が挙げられる。多くの被子植物では花器官数が科レベル・種レベル で安定している。花器官数は進化の過程でどのように安定性を獲得・消失し、決 定されていくのであろうか。

この進化過程の検出を目指し、雄蕊数が不安定に変化するアブラナ科ミチタネツ ケバナを用いて次の二つの疑問に取り組んできた。

(1)なにが雄蕊数を決めているか。
第一章:ミチタネツケバナの雄蕊数型における遺伝性の検出と気温応答性の発見

アブラナ科植物の雄蕊は一般に、長い4本と短い2本で構成されている。その中 で、一年草ミチタネツケバナは、長雄蕊4本のみ(4本型)を持つ花が大半を占め、 短雄蕊が1本生じるもの(5本型)や、2本生じるもの(6本型)が低頻度で出現す る。表現型は遺伝と環境の影響を受けて決定されるため、雄蕊数の決定における 両者の影響を調べた。
遺伝の影響を調べるために、野外の70個体から選抜した4本型出現率の高い個 体と、同集団からランダムに選んだ個体から種子を採取し、同一環境下で栽培し て次世代の雄蕊数を比較した。結果、親が4本型出現率が高いと、子も4本型出現 率が高くなった。
>さらに、環境の影響を調べるため、野外集団において雄蕊数型の構成比変化を 調べた。すると、花期(2月末~4月)の進行に伴って雄蕊数が減少していく様子が 観察された。この時間的変化を説明する環境因子として気温に着目し、「気温が 上昇すると雄蕊数は減少する」という仮説を立て、実験環境下で検証した。花期 の夜間気温を5℃と15℃ の二条件に分けて栽培したところ、夜間15℃ では夜間5℃よ りも雄蕊数が減少した。
これらより、雄蕊数の決定には遺伝と気温の影響を受けることが明らかとなった。

(2)雄蕊数の安定性は地理的分布に影響しているか
第二章:侵入植物ミチタネツケバナの遺伝構造と雄蕊数安定性の地理的変異の解明

雄蕊数が安定性を獲得・消失していく進化過程を示すためには、雄蕊数安定性 に変異があることを示す必要がある。そこで全国35集団から花サンプルを採集 し、各集団における雄蕊数型の構成比を調べた。その結果、多くの集団は4本型 に安定しやすく、雄蕊数が不安定な集団は北陸・近畿地方に分布が偏っているこ とがわかった。さらに、この安定性は遺伝的に保持されていることが栽培実験に よって示された。
ミチタネツケバナは近年日本に侵入・分布拡大した。雄蕊数安定性の地理的変 異を正しく解釈するためには、各地の集団を侵入経路の違いによって分類する必 要がある。現在、AFLPマーカーを用いて遺伝構造の解明に取り組んでいる。

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○ 葉特性からみた湿原群集構造

神山 千穂


群集内の多様性が維持されるしくみの解明は生態学の大きなテーマである。本研究では、種の機能的特性に着目し、ある群集内での種間関係と、異なる群集間での種内変異を定量化することによって、どのような群集にどのような種が出現するのかという群集構造を明らかにすることを目的とする。調査は2009年夏に青森県八甲田山系に位置する27の湿原において行った。特性としては、個葉面積、葉の最大高、SLA(葉重あたりの葉面積)、茎密度、種子重量に着目する。本セミナでは、主に、研究の背景と目的、および今後の課題について紹介する。

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○ 修士論文構想発表:鳥類の生態的特性に注目した景観の評価

今井 はるか


1章 景観評価から得られること
2章 都市景観の評価
3章 伝統的農地景観の評価
4章 東北地域全体の評価へ

今回の修論構想では、まず修論のおおまかな流れを説明した後に、3章のみを詳しく 発表したいと思います。

東北地方の農村にみられるユニークな特徴として、いぐねと呼ばれる屋敷林の点在す る伝統的な農地景観があります。これはその景観の美しさという文化的な面で評価さ れていますが、現在は生活スタイルの変化などにより減少しつつあります。本研究で はこのいぐねのある景観が、鳥類群集という視点から見た場合に、一体どのような評 価をすることができるのかを明らかにしたいと思います。仮説1として、まず、田ば かりが広がる単調な空間にいぐねが加わることで、特定の種ばかりが優占する偏った 群集から均等な多様性の高い群集になり、生態的サービスの向上という視点で高く評 価できる、仮説2として、森林性の鳥類にとってはいぐねがあることにより農地景観 も利用できるようになり生息地拡大という点で利点があるのではないか、という2つ を考えました。 研究は、(1)伝統的農地景観における鳥類の多様性と生態的特性の関 係を明らかにし、(2)多様性と生態的特性がこの景観のどのような環境要因と結びつい ているかを調べ(3)鳥類に注目したときにこの景観がどのように評価できるかを考察す るという道筋で行いました。発表では、この(1)(2)の解析の結果と、ここから考えられ るいぐねの景観の評価について詳しくお話したいと思います。

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○ 植物形質の種内および種間変異からみた林床植物集団

小嶋 智己


植物のさまざまな形質は、生育する環境条件によって異なることが知られている(地球規模でもミクロスケールでも)。よく知られている例として、土壌水分や光環境の勾配にしたがって、葉の形態学的、また生理学的構造が変化する場合などが挙げられる。この環境勾配に沿った変化は、種間においても、また種内で個体間においても(さらには個体内)においても観察されている。そしてこの環境に対する形質変化の方向は、種間と種内、また種や機能群によって異なる場合があることが示唆されている。なぜ、環境変化に対して異なった方向の応答を示すのか。これを理解することは、さまざまな環境勾配に沿って多種がいかに共存しているかを把握する上で重要である。

そこで本研究では、青葉山森林内で共存してる植物約70種について、各種各個体の生育微環境といくつかの形質を測定し、環境勾配に対して各形質がどのレベルでどのように応答しているかを確認することを目的とする。Cornwell and Ackerly 2009を踏襲して解析を行ったところ、環境に対する形質変化のパターンは、機能群によって大きく異なることが示唆された。

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○ 系統と形質の分散から熱帯雨林の群集形成を理解する

片渕 正紀


熱帯雨林の高い種多様性は生態的・進化的過程の長い歴史の産物だと考えられている。本研究はマレーシア・ランビル国立公園の52haプロットに生育する樹木の分布パターンを系統と形質の分散から評価することで、群集形成における形質の役割とその形質がどのように生じたのかを明らかにすることを最終的な目的とする。またフタバガキ科のように特定のクレードに着目することで、植物での形質置換の検出を試みる。

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○ 気候変動と増える予測研究~今後の展開を考える

島崎 仁哉


1気候変動がもたらす影響
気候変動がもたらす影響を概説した後、日本での懸念事項について触れます。さらに、他の要因に比べて気候変動は どれほど生物多様性に影響を与えるのかについて考えます。

2増える将来予測研究
生態学者の立場から将来を予測するということについて2つの異なるモデルによるアプローチを紹介した後、それがどのように発展 してきたのか、課題として何があるのかを考えます。

3予測研究の限界と今後の展開
方法論的な限界と今後の将来予測研究において求められるであろう考え方について検討します。

4修士研究進行状況
簡単に私の修士研究のアウトラインについて振り返り、進行状況を報告します。

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○ ナラ枯れ病の拡大を抑制する植生とは

今廣 佐和子


ナラ枯れ病が世間で騒がれるようになって久しいが、その被害拡大はとどまら ず、今年度は新たに大阪・岡山・宮城での被害が確認された。「ナラ枯れ」と は、体表面に病原菌であるナラ菌を付着させたカシノナガキクイムシ(通称カシ ナガ)が健全なナラ類に穿入することで、樹幹内にナラ菌が繁殖して樹液の運搬 を阻害してしまうために起こる、ナラ類の集団枯死のことである。これ以上の被 害拡大を防ぐために今日では数々の防除法が開発されており、また、その防除法 を効率的に行うために、GISを駆使したナラ枯れ病の拡大予測も積極的に行わ れている。

GISを利用することで実際に現場へ赴かずとも、これまでの被害拡大状況の分 析からの被害拡大予測が可能であり、その精度も上がってきている。しかし GISでの予測では、植生図上でのナラ植生にのみ着目して予測しているため に、ナラ以外の植生が被害拡大に与えている影響は考慮されていない。しかし、 カシナガはナラ以外の樹種にもアタックするうえ、ブナや針葉樹、その他広葉樹 はアタックされても枯死せず、カシナガ自身の繁殖成功度も下がることがわかっ ている。つまり、ナラ類以外の植生もナラ枯れ病の被害拡大に影響を与える(抑 制する)可能性がある。

そこで修論では、ナラ以外の植生が被害拡大を抑制しうるかどうかを検討する。 具体的には、(1)どのような植生が被害を抑制できるか(2)抑制するにはその植生にど の程度のスケールが必要か、検討していく。 ナラ以外の植生が被害拡大に与える影響がわかれば、予測の精度アップにもつな がり、ナラ枯れ病が拡大しにくい将来の土地利用の仕方も提案できるだろう。

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○ 葉1枚づつの光合成速度と植物の指数成長・密度効果との接点

石川県立大学ポスドク(菊沢研)小山 耕平


植物は葉の集団だから、植物成長の法則は、葉1枚づつの光合成速度の合計値として導く事ができるはずである。 そのむかしBlackman(1919年)は「植物が指数成長するのは、個体光合成速度が葉の量に比例するから」と考えた。 これは全葉の光合成速度が同じなら当然だが、葉は1枚1枚異なる。そこで葉の光合成速度を1枚づつ測定して、本当に比例するか調べた。
同様に、葉が受け取る光を1枚づつ実測して、個葉どうしの光をめぐる競争と、個体にかかる密度効果との関係を明らかにした。

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○ 葉の枯死とわたくし

彦坂幸毅


アオイスミレは落葉樹林の林床に見られる常緑草本です。この植物は常緑ですが個葉の寿命は半年強しかありません。春に夏葉を出し、秋になると越冬葉が出て夏葉が枯れます。越冬葉は春が来ると枯れます。我々は越冬葉が春になると枯れるのはなぜか?という疑問をもちました。越冬葉の枯死を導く要因として(1)日長や気温の変化、(2)林冠木の展葉による林床光環境の悪化、(3)夏葉の展開による被陰、(4)夏葉との栄養塩をめぐる競争の4つの仮説を考え、(あ)林外に移設する、(い)夏葉を地表面に固定して被陰を防ぐ、(う)夏葉を摘んで栄養塩の送り先をなくす、という操作実験を行いました。今回のセミナはこの結果を紹介します(実験を行ったのは10年前ですが、最近ようやく論文を書きました)。この論文の紹介だけでは10分で終わってしまうので、背景として私が葉の枯死に関して行ってきたこと、また、来年度から始めようとしている実験計画についてお話ししたいと思います。

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○ 標高傾度に沿ったハクサンハタザオとイブキハタザオの解剖学的・生化学的特性 ー植物の山地適応過程の解明を目指してー

永野聡一郎


高標高に生育する植物には、厳しい生育環境への適応に貢献していると考えられる様々な表現型が見られる。しかし、これらの表現型がどのように獲得されてきたか=進化してきたかという表現型の獲得順序や山地適応への貢献度などは、これまで十分に明らかにされていない。そこで、シロイヌナズナに近縁で、日本の山地帯に生育するハクサンハタザオ(ハクサン)と本州中部の伊吹山周辺で本種から派生的に分化した高標高生態型のイブキハタザオ(イブキ)を対象に、植物の山地適応を表現型レベルからゲノムレベルまで明らかにすることを目標に研究してきた。昨年度までの表現型レベルの解析として、個体地上部の物質分配や茎特性、葉特性の標高傾度に沿った変異が明らかになってきた。なかでも、葉特性(LMA)は生態型間で標高傾度に対する応答が異なっており、葉の生理的な性質が生態型間で異なっていることが示唆された。そこで本年度は葉の解剖学的、生化学的特性を明らかにすることを目的とした。 葉の厚さは、柵状組織と海綿状組織の両方が厚くなることによって、標高傾度に沿って増加する傾向があった。しかし、生態型間の標高への応答の違いは検出されなかった。表皮組織の厚さは変化が見られなかった。また、葉面積あたりの総クロロフィル量はハクサンよりもイブキのほうが有意に高く、標高に対して生態型間の応答が異なっていた。イブキは厚い葉に多くの光合成器官を備えていたと考えられ、生態型間の生理的な機能の違いが示唆された。さらに、ハクサンとイブキの紫外線耐性と低温耐性に着目した現在進行中&今後の研究計画についてお話しします。

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○ どんなお花が食べられる? =キク科植物の繁殖器官への食害を決める要因=

小黒芳生


植物の中には、花を食べられやすい種と食べられにくい種がいます。 では、どのような性質を持った植物の花が食べられやすいのでしょうか? 本研究では、花の性質(大きさ・窒素・リン・水分)、植物の由来 (在来・外来)などの違いで、花の食べられさの違いを説明できるのでは ないかと考え、調査を行いました。 今回のセミナーでは、これまでに調べた結果と今後の予定をお話しします。 よろしくお願いします。。

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植物生態研究紹介 > 2009年度 講座セミナー要旨